第13話 私は異世界で旅をする

 

 目を覚ました彼らに対して精霊樹が代わりに説明してくれるが、全てが嘘の説明であったが彼らはそれを知る由もなくただその説明を受け入れた。


「この度は誠に勝手なことをしてしまい申し訳ございませんでしたまさか精霊樹様のご友人だったとはいざ知らず無礼をお許し下さいませ」


「よい!!あれは見た目が化け物だからのう攻撃するのもわかる故に今宵の事は全て不問とする」


「寛大なお言葉、誠にありがとうございます!!」


「さて今宵はもう遅い帰るがよい」


 確かに空を見ると既に赤みがかかっている。既にそんな時間がたっていたのか……。


「失礼ですが……修繕の方は」


「とりあえずは良い。お金の方もこちらで用意しておく」


「かしこまりました……」


 話していた彼は後ろの人達に対して帰るように仕向けるとこちらに視線を向ける。


「こやつらは良い」


 彼が何かを言う前に精霊樹が口を開き、それを聞くとすぐさま頭を下げそのまま帰路につくがその時その他数名から物凄い睨まれる。

 それは頭を下げてた彼等ではなくその後ろにいた人達からだ。

 微かにだが不満の声などが聞こえ、その中には素材が……とかと聞こえてくる。もしかしたら素材を報酬に動いてもらったのではないだろうか?

 どうにも悪い事をしてしまった感が否めないと、同時に人のを素材扱いしないで欲しいとも思う。


「さてあやつらも帰った少し話でもするかの?」


 精霊樹は彼らを見送るとこちらに視線を戻す。

 私も丁度話がしたかった所だ。精霊樹は私の事を知っている言ったがどこまでだろうか?


「しかし伝説の姫さんがお主だとはな。あやつが来るわけだ」


 それを聞くとようやく落ち着いて隣に座ってたイリスが反応する。


「あの……その姫ってなんですか?普通でないのは分かるのですが……」


「お主……エルフであろう?聞いた事ないかのう【竜の戦乙姫ハイドラプリンセス】という職業を」


「いえ!!全くないです!!」


「なぬ!!?長命種であろう少しでも聞いた事位」


「本当に聞いた事ないですごめんなさい……」


 それを聞いて驚愕な顔をしながらへたり込むかと思いきや、すぐさま意気揚々と立ち上がりイリスに対して説明しだした。



 精霊樹説明中……



 そして何故か私メインの話であったはずなのに蚊帳の外に放り出された私は、精霊樹の説明に聞き耳立てながらアイテムの取り出しの訓練をしていた。


 それにしてもこの職業そこまで凄かったのか……。

 いや、仮にも最高ランクの職業だったか、ゲーム内だと当たり前に皆習得してるからなぁ〜。

 それにしてもまさか神様の話まで出てくるとは思わなかった。

 神々の戦争の被害で生まれたのが魔物だったりとかいやなんというかスケールがね……すごいよね。

 ゲーム内でも神様の話は幾つもあるが彼女の話している事は聞いた事すらない。

 第一に、まず神様の数が違う。ゲーム内では十二神だったが、こっちでは十三神……一柱多い。

 というのもどうやらこちらでは創造神たる神様がいるらしくそこから十二神が創造されたとの事だが、神々の戦争によって全て消滅したらしい。

 そしてその時に世界中に魔力が落ちていき人々に魔力が宿ったとかなんとからしい。


「……それでな!!ここにおるこやつはなそれの末裔ではないのかと言うことなのじゃ!!」


 それに私が持つ職業の生まれまでもが語り継がれているらしい。

 戦争の被害者である戦乙女が地上に落ちその時たまたま目の前にいた原初の竜種との間に生まれたのが【竜の戦乙姫ハイドラプリンセス】との事だ。



「それで!!お主実際の所…………なんじゃこの道具達は」


「え?……戻し方わからなくて……」


「あと私違うよ?そんな神聖的な者じゃないよ普通の竜人族だよ」


「ほら 見てよイリスさんなんてそんな話聞いたからかめちゃくちゃ跪いちゃったよ」


 私と精霊樹の前で膝まついているイリスの手を取り顔をあげるように促す。


「イリスさん、そんな畏まらないで下さいお願いします」


「で、ですが……偉大なる神々の末裔となるお方に対してそんな無礼な事など」


「違うから!!第一私には家族はいません理由は言えませんが……。ですから血縁関係は一切いないんです」


 こればっかしは嘘ではないこっちの世界には家族など居ない……かもしれない。もしかしたら妹がいるかもしれないが……。


「ですから……できればいつものイリスさんに戻って下さいせっかく最初に会った優しくしてくれた人からそんな目で見られたくありません……」


 私にそう言われ私の顔を見て、そこでようやく自分がどんな目で見てたのか気付いたらしい。

 私から見たイリスの目には恐怖の目をしていた、イリス本人はそういうつもりは一切なかったのだろうけれども、脳そのものはそうもいかなかったらしい。

 いわば私は世界を壊せる伝説の身内となるのだから。


「ご、ごめなさい!!そんなつもりはなかったのよ!!」


「……そうねちょっと気が動転してたみたい」


「そのようですねほらこちらに座って下さい地べたは痛いでしょう?」


 イリスの手を引き、一緒の長椅子に座る。




「しかしじゃ……ならばお主は何なのじゃ??この道具達もそうじゃが……」


 精霊樹が山のように積まれてる道具を見つめながら口を開く。


「何なんでしょうね私も分かりません気づいたらこの町の先にある丘にいたので……」


「面妖な者じゃのう お主は」


「まぁ今は考えても仕方ないよ分からないこと考えても時間の無駄だからね」


「確かにそうじゃが……むぅまぁ良いじゃろ」


「さて……我は戻るかの色々としなきゃならん」


 そこでようやく思い出すなんの為に練習をしてたのかを。


「あ!!」


「なんじゃ何じゃ?」


「これあげるよ売ればお金になると思う」


 道具の山から自分が使わなそうな素材を渡していく。

 さすがに私の身内の竜のせいでこうなったのだから謝罪の意も込めて渡していく。


「ちょ、ちょ、おおいわ!!」


「持てぬわ!!こんなに!!それに良いのか?どれも貴重ではないのか?」


「ん?大丈夫だよその程度の素材ならいくらでもあるから」


 精霊樹が渡された素材から1枚の鱗を取り凝視する


「これはなんの鱗じゃ?明らかに異質な力があるのじゃが」


「さっきの竜達のどれかの鱗だよ余ってるからあげるよあの人達にも悪い事したからねいらない分は渡すと良いよ」


 冒険者に渡る可能性を考えて牙や爪等は渡さない、あれらはどれも竜を傷付ける事のできる代物だからだ。

 もしかしたら、すでに竜の素材で作られた武器はあるのかもしれないけれども警戒をしない訳にもこちらとしてもいかないのだ。


「ほぅ……竜の素材ならまぁあやつらも満足するであろう」


「うむ、助かったぞ感謝する」


「いいえ〜構いませんよ」


 さて残りは戻したいのだが、はて?どうやって戻すのだろうか?

 しばらく道具の山の前で考えていると、一つのメモ頭に浮かび出す。

 異様に頭に残るメモを取り出し中身を読んでみると……。


『手に取って戻したいって念じながら出来るよ

 ⸜(* ॑꒳ˆ * )⋆*☆Byエスタス』


 どうやらエスタスからのアドバイスだったが……

 異様に顔文字が腹立つな!!まぁ助言は助かるけどさ。

 書いてあるとおりに手に取り念じると手の上から道具が消えてった。

 意外と簡単だった……。何をあんなに悩んでたのだろうか??

 出したものを全てを戻し終え二人を見ると二人とも何かを話し込んでいる。


「おまたせしました」


 私が声をかけると何もなかったかのようにすぐさま元に戻る。


「良い もうこんなにも暗い足元には注意して帰るんじゃぞ」


「はい 精霊樹様今日はお話出来て大変嬉しかったですそれではまた機会があれば」


 イリスは深々と頭下げながらそう言った。

 そして私達はそのまま精霊樹と別れを告げ宿屋に戻り、食事を済ませると既に両者とも限界だったのかベッドに潜り込むとすぐさま夢の中に誘われたのであった。






「…………眠ったよね」


「ごめんなさい本当なら相談するべきなんだと思います。

 ですが私には他人を巻き込む度胸はありませんでした」


 私は聞かれてもないはずなのに彼女そう謝罪し、テーブルには一枚の紙といくつかの道具を置いて部屋を後にし、誰も居ない受付を抜けそのまま町から姿を消した。


 夜の暗い森に入るなり自己主張の強いメモが頭に浮かぶ。

 確実にエスタスからだ、メモを取り出し読んでいく。


『良かったの?君の味方になったと思うのに( ˙꒳˙ )???』


「あれで良いんだよあの目を見た瞬間にもう決まってた」


『そう……なら私からは何も言うことはないや(´・ω・`)』


 それっきりメモを寄越さなくなった。

 私だって一人は嫌だ。

 ……だけど

 どうしたって理由が思いつかない正直に話すわけにも行かない。

 かと言って嘘言うのだって限界が来る、となると選択肢は一つだけだ。


 一人行動を基本とする!!


 森を抜け私が最初に立っていた丘に出る。

 ここから見えるのは木以外何も無いが、空は違った。

 明かりのないこの場所ではそれらを邪魔する光はなくそこには幾万の星々が私を出迎えてくれた。

 もとより旅自体はするつもりであったが現実でもゲームでも見ることのできない景色が私の背中を押してくる。


「せっかくの異世界だ。旅をしない訳にはいかないでしょう!!」


 ここから私の異世界の旅が始まったのである。

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