第5話 早速で突然の再会


 新学期。


 高校二年生になった俺は、クラスを確認するために体育館前を訪れた。

 

「(三組……か)」


 その場から立ち去ろうとしたとき。


 聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「おっ三組か。ってか全員同じクラスだな」


「そうだね。これで海斗が寂しがる心配なし、と」


「俺そんな寂しがってなくないか?」


「毎授業後に俺たちのクラス来てた奴が、よく言えるな」


「う、うるせぇ!」


 ……あ。


「早く教室行こう……あ」


「あっこないだの」


「同じ学校だったのか」


「……ひ、久しぶり」


 俺を助けてくれた三人。


 どうやら、同じ学校だったようだ。


 なんで今まで気づかなかったのだろう……。


「……これ、運命じゃね?」


「ははっ、そうかもね」


「早く教室行こうぜ。人集まってきた」


 周りを見れば、三人プラス俺の周りに人だかりができていた。


 確かに、この三人の容姿を見れば注目を集めるのも無理はない。


「お前も、早く行くぞ?」


「えっ、俺も?」


「当たり前だろ? 友達なんだから」


 友達。


 ……友達、か。


「う、うん!」


 俺は先を行く三人の後ろについて、教室に向かった。





   ▽





「改めて自己紹介しよう」


「だな」


 教室の端で陣を取る。


 まずは俺から、と言わんばかりに手を胸に当て、話し始めた。


「俺の名前は加賀海斗(かがかいと)。海斗でいい。ちなみに、好きなタイプは年上の酒好きなお姉さん。はい拍手」


「まだ聡美さん引きずってんのか?」


「それを言うな!」


 ノリよくツッコむ。


 海斗は制服越しでも分かるほどにガタイがよく、顔立ちが整っている。

 加えて赤髪で、かなり派手だが気さくだ。


「次は俺かな。俺の名前は多田流果(ただるか)。流果でいいよ。あと、好きなタイプは笑顔が素敵な子、かな?」


 センター分けされた、茶髪のおしゃれヘアーが特徴的な爽やかなイケメンが、白い歯を見せてニコッと笑う。


 教室にいる女子が、少しざわついた気がした。


「好きなタイプまで爽やかだな、お前」


「そうかな? 笑顔が素敵な子、イイよね?」


「い、いいんじゃない?」


「だよね」


 流果はカリスマ性がにじみ出ている。


 流果みたいになりたいと、男ならみな思ったことだろう。


 視線は移って、眼光の鋭いクールな男の方へ。


「俺の名前は前原壮也(まえはらそうや)。気軽に壮也って呼んでくれ。好きなタイプは……眼鏡が似合う子。以上」


「眼鏡フェチなんだ……」


 少し意外だ。


「もしかして、お前も?」


「い、いや……」


「お前も?」


「……は、はい」


「そ、そうか……仲よくしよう」


「う、うん」


 ……なんだろう。

 

 意外に可愛げのある人なのかもしれない。


 最後に、視線は俺の方に集まる。


「えーっと、俺の名前は成宮怜太。怜太って呼んで欲しい。好きなタイプは……家庭的な人、かな?」


「なるほど……ふぅーん」


 含みのある笑みを向けてくる海斗。


「な、なんだよ」


「いやぁ、ちょうど、怜太のドタイプの女の子がいるなぁと思ってさ」


「え、誰?」


「……あぁーなるほどね。海斗、ほんとそういうの好きだねぇ」


「流果こそ、なぁ?」


「当たり前だろ? これ以上に面白そうな恋はないだろうからな?」


「「……フフフ」」


「な、なんかすごく悪い顔してる……」


 全く話について行けない。


 それは壮也も同じなようで、小さくあくびをしながら窓の外を眺めていた。


 かなりマイペースだな。


「これは楽しい高校生活になりそうだ……」


「だな」


「ほんと、何の話してるの?」


 そう聞いた瞬間。


 勢いよく教室のドアが開かれた。



「怜太さんが大変な状況って……‼」



 見覚えのある、桜色の髪。


 うちの高校の制服を身に纏い、息を切らして立っていた。


「……え?」


 沙希と目が合う。


 海斗の方を見てみれば、いたずらが成功した子供のような表情を浮かべていた。



 ……やられた。


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