第3話 こないだ助けた子じゃん!


 公園のベンチで、助けてくれた三人に囲まれながら話をする。


 話というのは、俺が仲間入りを志願した経緯だ。


「……ってことがあって、気づいたら叫んでたんです」


 俺は彼女に捨てられたことも、全部包み隠さず話した。

 

 すると赤髪のガタイのいい、顔立ちの整った男が目を抑える。


「……お前、辛かったんだなぁ!」


「……へ?」


 まさかの大号泣。

 顔をぐちゃぐちゃにして、肩を叩いてくる。


「ほんと、お前はいい奴だよ! 相手が完全に悪いってのに、悪口一つ言わずにさぁ!」


「あ、ありがとうございます?」


「無理すんなよぉ! 泣いていいんだぞぉ‼」


「あっ、はい……」


 別に泣きたい気分ではなかったので、涙は出なかったが。


「海斗泣きすぎ。お前が当事者より泣いてどうすんだ」


「だってよぉ……悲しいだろうがよぉ!」


「ははっ、海斗らしいけどさ」


 そう爽やかに微笑む、茶髪のイケメン。

 肌が白く、細身だがしっかりしている。


「ごめんね? うちの海斗が迷惑かけて」


「い、いえ……」


「あと、タメ語でいいよ? 違和感しかないし」


「そ、そっか。じゃあ、タメ語で」


 距離の詰め方も、なかなかに手馴れている。

 

 きっとかなりモテるタイプだろう。


「それにしても、ひどい女だな。そいつは」


 不満げにそう言う、黒髪の眼光が鋭いイケメン。


「やっぱりそうなのかな……」


「あぁ、間違いない。お前はその女に騙されてる」


 ……やはりそうなのか。


 何度もその現実から目を背けて、今日という日まで逃げてきたがもうそれはできそうにない。

 

 だが、やはり貶す気にもなれなかった。


「ほんとなんでこんないい奴が、イイ女に出会えねぇんだよぉ!」


「……あはは」


「クソがぁ!」


 おそらくマジ泣き。 

 

 この人は俺よりも悲しそうに、そして悔しそうにしている。


 

「(勝手に不良かと思っていたけど……もしやいい人なのでは?)」



 そう思ったら、優しい人たちにしか見えなくなった。


「その辺にしとけよ海斗。困ってるだろ?」


「だけどよぉ! どうにかしてやりてぇんだよ!」


「出たよ海斗の世話焼き。そんなんだからシスコンって言われるんだよ」


「それは今関係ねぇだろ!」


 この人、見た目いかついけどシスコンなのか……。

 

 意外というか、なんというか。

 しかしどこか違和感がないように思えた。


「……ん? 妹?」


 泣き止んで、パチリと綺麗な目を丸くする。

 

 その綺麗な目を、どこかで見た気がした。


「あっ、そうだ!」


 俺の肩を強くつかんで、名案が思い浮かんだかのような表情を浮かべる。




「俺の妹を紹介させてくれ!」




「「「は?」」」


 三人の声が重なる。

 

 発言者以外、ポカンと口を開いていた。


「お前なら、妹を任せても大丈夫そうだ」


 全く話が見えなかった。





    ▽





 後日。

 

 言われるがままに公園に行く。

 するとそこには昨日の三人と、一人の美少女がいた。


「だから私には好きな人がいるんだって……え?」


 視線が合う。


「おっ来たな? 紹介しよう、これが俺の妹、加賀沙希かがさきだ」


 ピンク色に近い長い髪に、スタイルのいい体型。

 すらりと伸びる足は雪のように白く、細い。


 

 ――俺はこの子を、知っている。



「「あっ! あの時の!」」



 少女と声が重なる。



 紹介されたのは、あの時助けた少女だった。

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