第9話 家庭的なポニテ美少女
スーパーに寄りたいという沙希の要望に応じ。
沙希と近所のスーパーを訪れていた。
「怜太さんって、苦手な食べ物とかってありますか?」
「特にないよ」
「そうですか! ならこれもいけそうかな」
主婦のように慣れた手つきで、食材をカゴに入れていく。
「もしかして、何か作ってくれるの?」
「はい! 私の特技は料理とか掃除とかの家事くらいで、それくらいしかできなくて……地味、ですよね」
「いやいやそんなことないよ! 家事できるのはすごいことだと思うよ」
一人暮らしをしていれば分かる。
家事というのはかなりめんどくさい。
それが特技になるのは、なかなかに至難の業で、普段からやっていないと間違いなく身につかない。
おそらく沙希は、日ごろから家事をしているのだろう。
「……あの、怜太さんに質問なんですけど」
「ん?」
沙希が真っすぐな瞳で俺を見据えた。
「家事ができる女の子って、お好きですか?」
「⁈」
「…………」
無言で俺のことを見つめてくる。
俺は素直に答えることにした。
「好き……だけど」
「そ、そうですか! ふ、ふぅーん」
「急にどうしたの?」
「い、いや別に! ちょっとした出来心というか、なんというか! まぁあれです。どうでもいいけど、聞いてみた、みたいな感じです! た、他意はないですからね⁈」
「う、うん」
「ふぅ……よしっ」
「よし?」
「い、いや! 何でもないですよ? さっ、早く食材を選びましょうか!」
カートを引いて足早に別の売り場に移動する沙希。
沙希の後を追う。
心なしか、沙希は少し嬉しそうだった。
▽
買い出しを済ませ、家に到着する。
「狭い部屋でごめんね」
「いえいえ。お構いなく」
沙希が俺の家にいる。
なんだかそれが少しおかしくって、新鮮だった。
「じゃあ早速キッチンお借りしてもいいですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます」
「なんか俺に手伝えることある?」
「いえ、今日は怜太さんはゆっくりしていてください。私がおもてなしします!」
「そっか。じゃあお願いしようかな」
「はい!」
俺はソファに座って、テレビをつけた。
キッチンではモデル級の美少女が、「よしっ」と気合を入れて髪を一つに結ぶ。
ポニーテールを揺らしながら、沙希がエプロンを身に着けた。
「沙希、エプロン姿似合うね」
「えっ⁈」
思わず本音を零してしまった。
「その、なんというか……似合うなって」
「……あ、ありがとうございます。なんか照れますね」
「そ、そうだね」
「ふふっ。嬉しいです」
「そっか。ならよかった」
沙希の幸せそうな笑みを見れて、言ってよかったと心の底から思う。
「……不意打ちはずるいですよ(ボソッ)」
沙希が何か言ったが、よく聞き取れなかった。
その後、トントンと軽快な音が響いてくる。
……なんというか。
キッチンに立つ女の子の姿を見るのは、いいなと思った。
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