第8話 迎えに来る噂のあの子
放課後。
足早に教室を出て行った三人に手を振って、俺は教室に残る。
沙希が俺の教室に迎えに来てくれるのだ。
後輩の女子がわざわざ教室に迎えに来る、というのは傍から見れば変な話だが……気にしないことにする。
一人で自分の席に座っていると、前の席に座っている土田君に声をかけられた。
「なぁ成宮。成宮ってさ、あの三人と仲いいの?」
「あの三人って……海斗たちのこと?」
「そうそうあの加賀のグループ! この学校だと結構有名なんだよ」
「へぇーそうなんだ」
確かに、あの三人は容姿が抜群にいい。
こないだ遊びに出かけた時も、数人の女子から逆ナンされていた。
「なんならここら辺の高校生ならみんな知ってるかもな」
「えっそうなの?」
「そりゃそうだよ! だってあいつら、顔もいい上すっごい性格もいい奴でさ。絡まれてる奴とか助けたりしてんの。ヒーローだよなぁ」
「そうだね」
やっぱり不良じゃなくて、めっちゃいい人たちなんだな。
なんというか……あれだ。
友達がよく言われているのを聞くと、俺が誇らしくなってくる。
「そんな三人と仲いいとか……成宮何者?」
「いや、俺は別に普通の人間だよ」
「ほんとかぁ? 実はその長い髪を切ったらイケメンだったりするんじゃないの?」
「そんな漫画みたいなことあるわけないでしょ?」
「……まぁ、それもそうか」
土田がケラケラと笑う。
「そういえばさ、噂によると加賀にめっちゃ可愛い妹がいるらしいんだよ」
「ギクッ」
「ん?」
「い、いや……何でもない」
「そうか。それでさ、なんとその妹、この高校に通ってるらしいんだよ。一年生らしい」
「へ、へぇー」
どう反応していいのか分からない。
だって今土田君が話しているのは沙希のことだから。
というか、やはり沙希は噂になっているのか。
いや、あの容姿で噂にならない方がおかしいか。
「一度でもいいから、見てみたいよなぁ」
今からその沙希が、この教室に来るんだよなぁ。
なんてことは言えず。
しかしなんとタイミングの悪いことか。
「怜太さん! お待たせしました!」
沙希が息を切らして、ちょうど教室に到着した。
土田君が目を丸くさせ、俺の方を見てくる。
「ごめん土田君。俺行かないと」
「……成宮? もしかしてあの子、加賀の妹?」
なんか目が怖い。
「ま、まぁ」
「……な、なんでお前ばっかりがぁぁぁぁぁぁ‼ 全然普通じゃねぇじゃんこの嘘つきがぁぁぁぁぁぁ‼」
「土田君怖いから!」
ぐすんと鼻を鳴らす土田君。
沙希はきょとんと首を傾げる。
「怜太さん? 早く行きましょう?」
「う、うん。……じゃあまた明日、土田君」
「……楽しめよ、成宮」
「ありがとう」
なんだかんだ土田君は変わっているが、基本的にいい人だ。
俺は土田君に手を振り返して、沙希と教室に出る。
「面白い人ですね」
「そうなんだよ」
クスリ、と沙希が笑った。
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