第20話 恐怖を緩和させて?
「うわぁーすごい!」
「人多いね……」
ニ十分ほどエントランスで列に並び。
ようやく遊園地内に入ることができた。
「なんかすごいですね! わくわくします!」
「だね。まずはどこに行く? マップここにあるけど」
「そうですね……まずは、定番の被り物を買いたいです!」
「なるほど。じゃああそこの店に入ろうか」
「はい!」
すぐ近くにあった店に入る。
ここも又、かなりの人で賑わっていた。
人混みをかき分け、被り物コーナーに到着する。
「わぁぁ、いっぱいありますよ! 怜太さん!」
「だね。これは選ぶの結構迷いそうだな……」
「怜太さん怜太さん! これ、似合いますか?」
沙希が猫耳の付いた、白い被り物を被る。
そして猫の手を作り、ポージングを取った。
「にゃん♡」
「⁈」
凄まじい破壊力。
今すぐにでも写真に収めたいと、右手がうずく。
「ど、どうですか?」
「……す、すごく可愛いと思います」
「ふふっ。ありがとうございます。怜太さんって、照れてる時敬語になりますよね」
「えっそうなの⁈」
「気づいてなかったんですね。怜太さんって、やっぱりおちゃめな人です」
「そ、そうかも……」
「男の子ですけど、なんか可愛いですね」
「⁈ さ、沙希⁈ なんかテンションおかしくない⁈」
「ハイテンションですっ!」
ふんす! と謎の言葉を発する沙希。
ともかく、沙希が楽しそうなら何よりだ。
「怜太さんは……これなんかどうですか?」
「ちょっと被ってみるよ」
沙希からネズミがモチーフになっている被り物を受け取る。
「あとこれも!」
「こ、これも?」
「はい! ぜひぜひ!」
「……わ、分かった」
あと何故かサングラスも渡され、俺はすべてを身に纏った。
くるりと沙希の方を向く。
「ど、どうかな?」
「す、すごくお似合いです! これで行きましょう!」
「いや、でもサングラ」
「これで行きましょう!」
「……わかったよ」
というわけで、やけにハイテンションな沙希に勧められるがまま、被り物を装備した。
一周回って少し楽しくなってきたことは、沙希には秘密だ。
▽
その後。
被り物プラスポップコーンを手に入れた俺たちは、アトラクションに乗ることにした。
まさかの五十分待ち。
待つことは得意ではないが、沙希のためなら我慢できる。
それに、沙希と話していたら、あっという間だろう。
「楽しみですね、アトラクション」
「だね。沙希って、絶叫系とかイケるの?」
「うーん……あまり得意ではないですね」
「えっじゃあ大丈夫? これ、ここで二番目に怖いらしいけど」
「……へっ?」
サーっと温度が引いていくのを感じる。
さっきまで笑顔でポップコーンを食べていた沙希は、白い顔になった。
「……戻ろうか」
「い、いや! 大丈夫です!」
「で、でも」
「……怜太さんと一緒なので、たぶん大丈夫です」
沙希が俺の服の袖をちょこんと掴んでくる。
「……そっか。怖かったら、いつでも言ってね」
「は、はい!」
……ほんとに大丈夫だろうか。
少し心配だ。
「れ、怜太さぁん……」
「大丈夫だよ、沙希」
「で、でもぉ……」
席に着いた俺と沙希。
現在頂上に向かって、だんだんと上がっている最中だった。
沙希が涙目で、俺のことを見てくる。
どうやら本当に怖いらしい。
「……手、握ってもいいですか?」
「……うん、いいよ」
「ありがとうございます……」
沙希の細くて柔らかい手が、俺の手に絡む。
ひ弱な力だが、絶対に離したくないという意思を感じた。
「ひっ……!」
「お、落ちるッ!」
俺からも強く握り返して、手を上げる。
一瞬見える、遊園地の全貌。
そしてすぐさま、浮遊感が襲ってきた。
「きゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁああああ‼」
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