魔族的宥和政策が人族の目から如何に映るのか僕達は未だ何も知らない

　ラクロアはその身に高純度の魔力を宿し、人族にとって魔族への対抗手段として兵器運用される為に産み落とされた『人造の獣』であった。

　その運命から逃れるように、母親そして己の弟を残し、その場に立ち会った人間を無意識の内に身に宿った『魔翼』によって殺し尽くしていた。

　シュタインズクラード王国が支配するスペリオーラ大陸は人族と魔族の間で行われた『人魔大戦』から既に四百年以上の時が経とうとしていた。しかし、人族は未だ消えぬ情念を燃やし、魔族に対抗すべく研究を積み重ね続けている。

　そんな人族とは対照的に魔族は人魔大戦以前まで王国の領地であったメライケ大森林に、人知れず魔族と人族が住まうトリポリ村を設立し、人と魔族の共存を緩やかに試みていた。

　ラクロアは生まれ際に過去の記憶を失い、それでも…続きを読む