リア充3人組はもはや見る影もない!

 陰月礼人が、生徒会書記担当に絡まれている際のことだった。この男が動き始めたのは。


 おい、どうしちまったんだよ。誠に南……。

 よくよく考えたら、南がハニートラップを陰月に仕掛けようとしたあたりか。俺たち3人組の歯車がかみ合わなくなりだしたのは。


 俺こと家塚鳶尾は、この事態にイラつきと焦り、両方を感じていた。


 ぜ、全部……陰月の野郎のせいだ。なんか、誠は空回りしてるし。南は南で陰月に何故かべったりだし。ああ、俺たち三人の生活はどこにいったんだよ。


 両こぶしに力を入れながら、俺はどうやったらまた三人の生活が取り戻せるのかを思案していた。


「……………」


 やはりというべきなのか。俺の頭に浮かぶ、鍵を握る人物。


 それは―――南ではなく、陰月礼人……やつに他ならなかった。


 


 そんな気がしてならない。俺はあいつのことは心底無能な奴だと思っているが、でもなぜだかそう感じてしまうのだ。


 夢島、暁が陰月をチヤホヤしだしたのに続いてあの南まで……と考えると。


「く、くそっ。陰月。俺はお前を見誤っていたのかもしれない」


 歯ぎしりをして俺は陰月のもとへと向かおうとした。


♦♢♦


「……は? あれは確か、生徒会のロリと、か、陰月ぃぃ!?」


 陰月を探そうと、渡り廊下をうろちょろしていた時のこと。


 俺の視界の隅に映ったのは、桃色ツインテールと冴えない男の姿。


 か、陰月の野郎に会えたのは幸いだが……な、なんで生徒会が……陰月なんかにっ!?


 い、一体全体……何がどうなってんだ!?


 俺は居てもいられなくなって、陰月の元へと駆けつけ、声をかけようとする。


「……お———」


 おい、と叫ぼうととした瞬間だった。


「いやぁ、今面白いとこなんだからさ。邪魔すんなよ」


 そんな声が聞こえた刹那。右肩に凄い痛みが走った。


 『い、いてぇ……な、何なんだよ』と思っていると、左耳から「邪魔すんなよ……潰すぞ?」とドス黒い声音が耳に響いてくる。


 はっ、と思い振り返るとそこには冴えなくも殺気を放った男の姿が。


 ……は、はは。おいおい。まじかよ……。お前までそうだっていうのかよ。


 


「て、テメェ……一体」


 俺が知る内田は冴えなくも穏やかなやつだ。だが……今の内田はとは違う。二重人格を疑うレベルだ。


「……俺はただ、陰月にトップをとってもらいたい。それだけだ」


 うっとりとした視線で、遠くにいる陰月を見つめる内田。


 こ、こいつ……まさか陰月のこと好きなのか?


 俺は内田を見ると唖然とすることしか出来なかった。

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