実力隠しの俺、体育にて
はぁ。昨日も帰ってからは相変わらず妹に馬鹿にされたな。まっ、いつも通り。平常運転……か。
それにしても、昨日から特にある二人の女子の視線がおかしい。一人は夢島莉央。二人目は暁真由。
はぁ。暁に関しては半ば諦めていたがまさかそこに夢島が加わることになろうとは。
懸念点が一つ増えたため、俺は思わずため息をついた。
そういえば次の授業は体育か。
「……けけっ。森副会長。まじ色気やべぇって」
「おお〜。どんな感じだったんだよ!?」
「それがな〜。……けけっ。秘密」
「おいおい! 教えろって〜」
「まぁ胸はやばかったな」
「おい! ほんと何があったんだよ!」
はぁあほらしいな、ほんと。着替えで女子がいないのをいいことに……。
お前、そのセリフ南や他の女子の前で言えんのか??
「………なんだよ。陰月! お前には縁のない話だ……こっち見んな」
へいへい。別に森副会長? さんに興味なんてありませんよーだ。
まぁ、たしかに胸はすごかったけど。
「……それでな、それでな」
「おう! おう!」
そんな感じで陽キャ組は相澤を筆頭に森副会長の話とやらで盛り上がりを見せ続けた。
一方、俺やら内田は。
「……はぁ。羨ましい……。俺も森副会長の胸揉んでみたい」
いや、うん、すまん。俺は内田と同じ部類じゃないわ。
「……お前、それセクハラだぞ」
「わーってるよ。今は男子だけなんだからこれぐらいいいだろ?」
馬鹿を言う内田に対して俺はずっとジト目を向け続けていた。
♦︎♢♦︎
「うげーっ。今日50m走かよ」
「まじ??」
「はぁ、最悪ー」
運動場にて。皆の苦言がグラウンドに響き渡る。あぁ……50m走か。そういえば、どの位が平均なんだっけ? 確か6.5秒くらい??
中学の時は7秒ぐらいが平均だったな。だから高校は……分からんけど6.5秒くらい……か?
まぁでもそんなもんだろ。
「………お前は、いつもポーカーフェイスだよな」
「え? あ、あぁ」
たまたま隣にいた内田が準備運動をしながら俺に声をかけてきた。
ちょうどいい。内田に聞いてみよう。
「……50m走ってどのくらいが平均タイムだっけ?」
「おっ。流石に走るのでは最下位回避したいのか??」
別にそんなつもりはないんだが。そんなにニヤつかれてもな。
「……まぁ6秒位じゃね? (嘘だけど)」
6、6秒!? そ、それは速くないか?? だが、この内田の真顔っぷりを見るとどうも嘘には見えない。
平均が6秒……なら、6.6秒位を狙えばいいか。
ちなみに今回。俺は最下位をとるつもりはない。
なぜなら、暁真由に———
『クラス最下位を取り続けることで、他の人が馬鹿にされるのを防いでいるんですね!』
と、きらきらした感じで言われたからだ。こんなん言われてたら……全部最下位なんて取っちゃいけない。
それに、夢島も懸念のひとつだ。
しかも、最悪なことに………。
「………ふふっ。誠たち、50メ? 私見てるからね」
はぁ。女子も運動場で体育とか嘘だろ??
男子に遅れる感じで現れてくる女子たち。もちろんその中には………。
「……ふふっ」
「………あっ!」
そう。このお二方さんもいるわけで。
「……おっ。ポーカーフェイス……崩れたな」
うるさい。俺は内田に速攻でツッコミを入れるとともにため息をついた。
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