実力隠し失敗しちゃう??

「……けけっ。俺と一緒に走ろーぜ? 陰月」

「…………」


 はぁ。馴れ馴れしく肩組んでくるなよ……。

 声の主は言わずとしれたクラスの筆頭リア充、相澤誠。


 下衆な笑みを浮かべ「家塚も一緒に〜」やら

「高木も〜」など俺以外の奴らも誘ってるが……皆、体育系の男子じゃねーか。



「……ふふっ。誠! その面子じゃあ陰月があまりに不憫だよ……ぷぷっ」


 おい、南。お前も内心馬鹿にしてるのが見え見えだ。まっ、今更だしどうでもいいけどな。



「もうっ。はやくいくよ〜。真奈〜」

「わかった〜今行く〜。ふふっ、誠に家塚! 陰でひっそり見てるからね」


 俺の方は見向きもせずに一瞥してから去る南。その際、夢島と暁だけが俺に目を向けてくる。


 はぁ。なんかやりにくい。


 暁と夢島にマークされている以上、下手な真似はできないが……かといって最下位も今回はとれないな……。


 平均位に調整しないと、ますます疑われる。

 主に、暁に。


「………はぁ」

「めずらしいな……陰月。お前がそんなに嫌そうな顔するのは」


 ひょっこりと出てきて俺に声をかけてきたのは、内田だ。というより俺に話を振る男子で馬鹿にする以外の目的で接してくるのは内田しかいない。


「……まぁな。少し厄介だ……」

「……まっ。それが普通だよな。お前が一緒に走る奴ら結構足速いからな」


 いや、そういうことが言いたい訳じゃないが……。まぁ、そういうことにしておこう。


「……あぁ」

「まっ、あの面子なら皆5秒台かもな」


 顎に手を置き、真顔でそう推察する内田。いやいや……まじかよ。

 こいつらってそんなに足速いの??


「…………」


 無言で何も言えないでいると、内田が知らなかったのかと言いたげな顔で続ける。


「このクラス……学年で最高峰に位置するクラスだぞ?」


 え? 何それ。初耳なんだけど。


「……おい! 陰月〜。次俺らだから並ぶぞ〜」

「はやくこいって……」


 体育会系の筋肉ムキムキマンに、相澤そして家塚に催促される俺。


 おいおい。もう出番かよ……。


 「はぁ」と、ため息をつきながらあたりを見回す。

 すると、すぐに「あぁ」と合点がいき納得した。


「……ふふっ。頑張って〜」

「……誠! 応援してる!」

「相澤くん達、走るよ!!」

「えー。でもあそこに陰月いるって……なんか違くない??」


 なるほどな。女子の体育がまだ始まってないのをいいことに……。


 はぁ。女子に見せ場を見せたいがためだけに……最初に走るのかよ……。

 はぁ、くだらなさすぎだろ……。


 俺は呆れ果てて頭をかかえる。まぁ、6.6秒位で走ればいいか……。


 気持ちを切り替えて、俺は軽い準備運動をしはじめた。


♦︎♢♦︎


「まっ、最下位はないよなー」

「女子見てるんだし、見せ場はここしかねーよな!」

「……けけっ。陰月〜。お互い頑張ろうな」


 はぁ。揃いも揃って……。走りだす直前までも俺を貶めたいか……。


 そう思い、肩を落としていると……。


「……オンユアマーク」


 掛け声が耳に響いてくる……。不思議と緊張感は全くない。まっ、はここで終いだしな……。


「……セット……」


 その声が聞こえてからすぐに担当員の旗が振り上げられる。


 その瞬間……。


 ……俺は……いや、俺たちは駆け出した。だが、すぐに後悔することとなる。


 え? 俺の前……誰もいなくないか?? ってか、女子のさっきまで聞こえてた「きゃーきゃー」という声援も……なんかなくなってるくないか!?



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あとがき


 皆様いつもありがとうございます。おかげさまで、ラブコメの日間にて7位をとれました。本当にありがとうございます!!これからも頑張っていきますので、面白いと思ってくれた方はフォロー・評価・応援の方お願いします!!

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