生意気な妹の疑惑。謎の生徒Rの登場??
妹視点です。
♦♢♦
な、なんであのクソキモ馬鹿兄があ、あんな美人と……。
ゲーセンでふらっと遊ぼうって思ってたのに、気になって仕方がないじゃない。
し、しかも逃げられたし……。
「あーもうっ」
髪を両手でぐしゃぐしゃっとさせて地団駄を踏む。視線の先で遠くなっていく美人とクソ兄を見ると無性に苛立った。
わ、私だって……まだ彼氏できてないのに。
自分よりも遥かに劣っているクソ兄。彼女なんて出来るわけないって思ってたのにいつの間に……。
帰ったら絶対問い詰めてやる。だから今は落ち着こう。
「すーーーーはーーー。すーーーーはーーーー」
大きく深呼吸して踵を返す。格ゲーで憂さ晴らしでもしようか。
そう思い立った私は重くなった足を古びたゲーセンへと向け、歩き出した。
♦♢♦
「にしし……」
画面の向こうで起こっているのはまさしく蹂躙。私が扱うギャング女性の『ドフュー』と向かい側に座る誰かさんの男格闘キャラ『バット』。
実力差は明白で私のコンボ技が何度も何度も炸裂している。
「なっ。く、っチ」
ガチャガチャガチャっとレバーを雑に動かす音が聞こえる。
ああ……乱暴にしたって勝てっこないっての。
容赦なく隙をついて攻撃。つまらないと思いながら操作していると次第に相手のHPが赤ゲージに到達する。
「っち……。バケモンかよ」
反撃の余地も与えずに一方的にボコる。しびれをきらしたのか相手はくそっと悪態をついてから、
「君さーー。なにメスガキのくせに俺をボコってくれてんの??」
鋭い眼光にチャラチャラとした服装。
あぁ……やばい。まずいの当てたかも。
「……げ、ゲームで手を抜く気は……ないので」
「……何。震えてんだよ。俺はなぁ。負けっぱなしが一番気に食わねぇ。でも、お前にはきっと何使っても何度やっても勝てねー気がする。だからさぁ、リアルで。つまり、ここの路地裏でやりあおーぜ??」
……あ、頭がおかしい。何、この人。これまでチャラそうな人に絡まれたことはあったけど実際に手をだしてくる人はいたことがなかった。
こういう危ないガチのやばい絡みって漫画とアニメだけの話じゃないの??
無意識に体がブルブルと震えてしまう。
「…………お断」
「……おっと帰らせるわけねーだろ? 散々俺をコケにしておいて」
ケラケラと下衆な笑みを向けてくる、この怖い人。
だ、誰かっ!!
そう思ったその時だった。
「……女子に手を挙げるのは感心しないな」
「あんっ!?」
え、何……。また頭のおかしい人?
男の肩に手を置き、私から男を引き剥がさせたこの謎の人物。
一見すればヒーローだけど……な、なんで仮面なんてつけてるの?
夏の屋台でよくみるお面。彼はそれを身につけていた。
「何、ヒーロー気取って……」
「……失せろ」
ドキっと心臓が震える。何故だろう。彼の声を聞くと……私まで彼は格が違うと思えてしまう。
「……な、なんだよ……バケモン揃いかよ」
お面男がガシッと掴んでいた肩の力を抜くと、私に絡んできた怖い人は肩を抑えながら去っていった。
「……この店には来ない方がいい、わかったな?」
「……え、あ……あの」
別に彼を好きになったとかではない。ただ、この縁は大切にしたい……。だからっ!!
「名前を……」
去りゆく彼に私は問う。
すると彼はうーんと、思案してから口を開いた。
「……謎の生徒Rとでも名乗っておく」
な、何それ……。予想外の答えに、唖然とする私であった。
♦︎♢♦︎
ふぅ、危なかった。ばれてない……よな?
ゲーセンから路地裏を抜け今は普通の道。
いや、本当に役立つ時が来てよかった。
俺は内心、喜びで満ち溢れていた。
ふっ……完璧なまでの実力隠しダークヒーローだったよな? さっきの俺は!
上機嫌な俺の手でフラフラと揺れる通学カバン。
その中にはちゃっかりカツラとお面が入っていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます