実力隠しの俺、違和感を覚える

 おかしい。何故こうなってしまったのか。


「……っち。なんで陰月なんかが」

「それねー! 誠! ほんっと、なんで陰月が」

「……調子乗ってね? 陰月」


 相澤に続いて南、家塚のリア充三人衆が苦言を漏らす。

 あぁ、今に関しては……俺も同意見だ。ほんっとどうしてこうなったんだか……。


「……私と昼ごはん食べませんか? 陰月くん!」

「……私も一緒に食べようかしら」


 昼休み真っ最中の教室にて。そう、暁が爆弾発言をしてきたのだ。しかも、そしてそれに夢島が付随し胸を張る。


 はぁ。なんで俺がこんな目に………。


 リア充三人衆だけじゃない。周りからも敵視されてないか……俺。

 しかも、隣の席の内田。お前は何で笑ってんだよ……。


「………えーと、俺眠いから」


 とりあえず、寝たふりだ。うん、それが1番いいだろう。

 机に頭をうっぷして現実を逃避する。



「え、あの寝られると困るんですけど……」


 暁……悪いが知らん。実力隠しのためには目立っちゃまずいんだ。目立った実力隠しなんて聞いたことないし……。


「……へぇ勇気だして誘ったのにそんな扱いするんだ」


 うっ……夢島め、痛いとこつきやがって。


「女の子に恥かかせるの??」


「っち。そんなやつほっとけって……。俺達と食べようぜ、夢島」


 そうだ、あいつらと食べればいいじゃないか。なんで今日だけ……しかも急に。


「……もう余裕がないのよ」

「そうですよね……だから」


 え、なっ!? 何するつもりだ、こいつら。

 チラッと上を見てみると、暁の潤んだ瞳が映り込む。そして、そのまま顔を近づけてきて……。


「………泣いちゃいますよ……この場で」


 耳元で甘ったるい声が響く。桃のいい香りが鼻腔をくすぐるが……な、泣く!?


 はっとした時には、体を起こして暁の腕を掴んでいた。


…………な、何やってんだ俺。


 か細い腕を見ると動揺するも、もうなりふり構ってられなかった。


「……い、行くぞ」


 周囲の視線が痛かったが、全てを無視して突き進む。


「ふふっ。じゃあ私も行くわ」


 背後から夢島の声がするが、俺の頭は真っ白になりかけていた。


 やばい、どうしよう。人気のないところに行かなければ……。


♦︎♢♦︎


 昨日のことです。私が……いや、私たちが焦り始めたのは。


「あっ、陰月くん………青山くん? とえっ!? ふ、と一緒に!?」


「……えっ、それは本当なのっ!?」


 私たちは、3階の渡り廊下から俯瞰する形で陰月くんを見ていました。

 だって私たちが見ていると陰月くん、嫌そうな顔するんだもん。だからこっそりとね。


「まずいわ……あの副会長に目をつけられるのは……」


 苦虫を噛んだ様にする夢島さん。確かに、あの人スタイルいいですしね………。


 自分の胸をみるとげんなりするので考えたくはなかったのですけど。


「……あの人には……『能ある鷹は爪を隠す』理論は通用しないわ……だからまずいのよ」


「えっ。それはまずいです! け、けど副会長のことどうしてそこまで知ってるんですか?」


「……言ってなかったかしら。あの厨二びょ……ごほん、あの痛い生徒会長の妹……それが私なの」


 え、えっーー!!!

 私は絶句するとともに驚愕しました。あの生徒会長の妹さんだったなんて。


「……と、とにかく作戦会議よ!」


 私たちは、陰月くんに接近する作戦をたてました。何やら話を聞く限り、副会長さんは相当やばいようです。


 だから……私はっ!!

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