実力隠しの俺、修羅場!?
はぁ。とりあえず体育館裏あたりに向かうか。冷静さを取り戻しつつあった俺は暁の腕を解放し階段を降りていく。
背後にはちゃっかり夢島の姿も見えどこかご機嫌そうだ。
「……体育館裏に行くぞ」
「………はい」
「…………ふふっ」
側から見れば告白でもしに行く男子にでも俺は見えているのだろうか。告白する側が俺、される側が暁、傍観者が夢島といったところか。
「……ふっ」
あり得もしないくだらない思考をした自分に思わず笑ってしまうが果てさて……一体どうしたものか。いっそのこと、実力隠しを暴露する?
いやいや、それは俺の信念に反するだろ。
陰に徹する者は未知の存在だからこそカッコいいんだ……。
夢島と暁の不可解な行動を止めるには本当に一体どうすれば……。
顎に右手を添えて思案する俺。階段を降り終え昇降口へと向かおうとしたその時だった。
「……お困りのようだな、陰月」
「………うっ、何でこんな時に」
「最悪の流れね」
背後から暁に続いて夢島の声が聞こえるが、無理もない。
「……どうも、森先輩」
「……うん。君はよしとして後ろにいるお二人さんはご機嫌斜めかな?」
「(あなたのせいです)」
「(あんたのせいよ)」
えーと、なんか俺を挟んで視線でバチバチやってないか?
何故かわからんが、居心地最悪だぞ……。
「……君たち今から昼ご飯っぽいね」
暁と夢島のもつ弁当からそう判断したのだろう。でもこの流れ……嫌な予感しかしない。
「……良かったら、私と一緒に食べないかい?」
は、はは。何でそうなった……。
脳内でそう反芻し続けていると、副会長は悟ったのか口を開いた。
「……個人的に君に興味があるんだ」
恥ずかしげもなく言っているあたり、恋愛的な意味ではなさそうだ。一体、この人は何を狙っているんだ……。
「……生徒会室には行きませんよ」
あそこはどこか近寄ってはいけない空気がでている。入学当初からずっとそう思っていた。
「……大丈夫。私も生徒会室に行く気はないよ? ただ君たちとお供がしたいと思っただけさ」
腹の底が見えない人だ。昨日の俺の走りで何か悟ったのか? いや、それはないはずだ。だって『まあまあだな』と澄ました顔で言ってたじゃないか。
「何が狙いですか?」
思っていることを言ってくれたのは暁だった。凄く警戒しているのだろう。口元がきゅっと締められている。
「……そんなに警戒しなくてもいいよ。今はね」
「……今はって貴方は!」
夢島が声を荒げて睨みつける。いやいや、どんだけ嫌いなんだよ……。ってか、この二人接点あったのか。
「……ふふっ。冗談だよ冗談」
夢島をなだめながら、明るい声をだした副会長。『でも』と言ってから続ける。
「……生徒会に興味があったら歓迎するよ、陰月くん」
「結構です。興味がありません」
生徒会なんて拘束機関だろ。自分の時間がとれないのはいただけない……。
「ふふっ、残念だ」
言葉の割には少し嬉しそうにする。ほんと何考えてんだか……この人は。
「それじゃあ、私は失礼するよ」
「え、昼ごはんはど、どうするんですか?」
「ふふっ。だから冗談だよ、冗談。では、私は失礼する」
嵐の様に訪れ、去る副会長。あの人とは出来れば関わりたくない、そう思う俺なのであった。
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