実力隠しの俺、まったりな昼を過ごす

「……むぅ、副会長さんには驚かされましたけどここでお昼ご飯を食べましょう!」


「……そうね」

「……俺は寝る」


 告白スポットとして有名だという体育館裏。

 今は昼時だからか人気を全く感じない。風のなびく音がどこか心地がよかった。

 まさに、昼寝には最適だ。


「……って、寝させないですよ」

「……貴方も私たちに聞きたいことがあるんじゃない?」

「……まぁ。じゃあ聞かせてもらうけど、なんで今日に限ってこんな誘いをしてきたんだ?」


 昼ごはんを一緒に食べよう。

 普段から仲良しならわかる誘いだが、唐突な誘いには何か裏があるに決まっている。


 大体、俺は別に暁とも夢島とも仲良くはないしな……。なんか勝手に興味惹かれてるだけで。


「……陰月さんとお昼ご飯が食べたいと思った。それってそんなに変なことですか?」


「いやでも唐突すぎないか? しかもなんで俺なんだ。相澤とかほら、もっと目を向けるべきやつはいるだろ……」


「……私が目を向けているのは、相澤さんや他の男子ではないです! 陰月さんなんです」


 いや、だから何で……。


「何でって、言いたげな顔してるけどそれは貴方自身が一番わかってることなんじゃないの?」


 くすっと笑みを向けながら、碧眼を向けてくる夢島。


『ふふっ。貴方、だしてないでしょ』


 茜色の夕日がさした職員室前で言われた夢島のセリフ。

 思えばあの日からだ。俺の実力隠し道に曇りがでてきたのは。

 まぁその前から暁には目をつけられていたが……。


「……さぁな」


 とりあえず答えを濁しておく。できれば思いっきり否定したいところだが、そうすればますます疑われそうだ。


「もうっ。ただご飯を一緒にすると言うだけで考えすぎですよ! さぁ食べましょ食べましょ」


 暁は弁当箱を勢いよく開く。俺と夢島は少し呆気に取られた。


「……そうね。今は昼を楽しみましょう」

「俺、昼飯ないんだが……」


 頬杖をつきながら悪態をつく。腹が減ったというより眠い。とにかく眠い。


「……眠そうな顔してますけど、ご飯食べれば万々歳ですよ!」


 弁当箱に広がる様々な具材。その中から黄色く照り輝くたまご焼きを箸でつまんでこちらをチラチラと見てくる。


「……あーん、とかはなしだぞ」


 言ってて少し恥ずかしくなる。これ勘違いだったら、俺超痛いやつ。


「……あーんって、そ、そ、そ、そんなわけないじゃないですか!!」


 ひどい慌てようだ。こんな反応されると俺のこと好きなのか? と疑いたくなるがそれはない。即座にその可能性を排除する。


 ………カースト下の俺を揶揄ってるだけだろ? もしくは俺のこと探ってるのか。


「……あーん、なんて恥ずかしいことは出来ませんが、良ければ……」


 真っ赤に染まった顔のまま、暁は弁当箱をこちらに向ける。


「たまご焼き……ひとつどうぞ」

「いや……俺は」

「女の子に恥かかせるつもり?」


 うっ。夢島め。さっきから痛いとこばっかりつきやがって……。


 夢島に少し睨みをきかせると、くすっと微笑まれ、暁からは潤んだ瞳を向けられる。


「……はぁ。わかった、食べればいいんだろ」


 指で玉子焼きをつまみそのまま口元へと運ぶ。

 たまご焼きなんていつ以来だろう。そういえば全然食べてなかったな……。


「ど、どうですか? お、美味しいですか?」


 身を乗り出しながら、聞いてくる暁。

 そこまで実ってない胸元であるが無防備すぎるが故に少し視線がそちらにいってしまう。


「ねっ、ど、どうですか?」


 テンション高めに暁は続けて言ってくるが、

うん、普通にうまい。食べてきたたまご焼きの中でも上位に入るうまさだ。

 ただ、それ以上に……。


「……甘い」


 居心地の悪さもあってか、俺はそんな面白みのない回答しかできないのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あとがき


 次回、リア充三人衆の一人。

 南が主人公に襲来します!

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