実力隠しの俺、放課後にて

 ついにきてしまった……。


「おーーい、陰月もう準備は出来てるぞー」


 遠くから響いてくるのは青山の声。はぁ、もう逃れられないのがつらすぎる……。


「では、見させてもらおうか……」


 挑戦的な瞳で俺を捉えるのは胸がボフッとされてる生徒会副会長さん。


 はぁ……勘弁してくれ……。


 あれからすぐに放課後がきてしまった。いつもなら早く放課後こい! と願うところだが今日に関しては来てほしくなかった……。もう帰っていい??


「それじゃあ50m測るぞー!!」


 青山のやつが叫んでるが周囲の視線はそこまで感じない。というのも、サッカー部が運動場を使っているためにいま俺たちは運動場の端の方にいるのだ。目立たない位置にいるのが唯一の救いだな。暁と夢島も……姿が見えない。不幸中の幸いとはこのことだ……。


「手は抜いちゃメッだぞ? 私と青山しか見てないから安心してくれていいよ」


 メッって何だよ。人差し指をビシッと指してきながら身を乗り出されると……ちょっと胸に目がいくんだが……。


「……ふふっ。陰月くんってどこか掴み所がない感じっぽかったけど……ちゃんとそっちにも興味あるんだね」


 そっちって……なぁ。ボインボインさせてたら誰でも目がいくもんじゃないのか……。あとこの人狙ってただろ……。


「……それじゃあ走ってもらおうかな」

「……分かりましたよ」


 少し不機嫌気味でそう言い俺は足で引かれたラインに立つ。


「………すぅーーーはーー」


 一度大きく深呼吸して前を見据える。50m先には手を振りながらニヤニヤしている青山。


 イラッとするが平常心だ、平常心。


 力は7、8割だせばいいとこだろうか。正直、あの副会長……危険な匂いがする。下手に手を抜くと本気で疑われそうだ……。あり得ないと理性では言ってるが、本能ではやばいと言っている。


「……じゃあいいぞーー!!」


 青山が声を張り上げて、ストップウォッチを振ってくる。その合図を聞いた副会長さんは「よし」と言ってから……


「オンユアマーク」


 迫力ある声が耳に響く。普段の声とは似ても似つかない声だ。少しだけ顔が強張る。


「……セット」


 そう言われた瞬間に、足に力をいれる。8割だ。8割くらいでいい……。


 そう何度も自分に言い聞かせながら、俺は走り出した。


♦︎♢♦︎


「……うむ。あの相澤とかいう男は期待外れだった。あのクイズを全問正解させた男が現れてくれれば……」


 放課後の生徒会室にて。生徒会長は一人コーヒーを嗜みながらそう呟いていた。


 にあのクイズ全問正解者に関しての情報提供を求めているが、何かあいつは知っている感じだった。


 ……一体誰なんだ。妹に聞いても知ってるはずなのに、『知らなーい』の一点張りだったしな。くそ、一体どうすればいい……。


 下唇を噛みながら拳に力を入れていると……。


 ————バンッ。


 突然生徒会室のドアが開かれた。


「………はぁ、はぁ、はぁ」


 何やら急ぎの用でやってきた様子。


「何があった?? 

「……あの会長、見つけたかもしれません。面白い一年生を」


「……ほ、ほう?? 何やらご機嫌な様だな、美幸……面倒くさいんじゃなかったのか?」


「……ふふっ。その筈だったんですが、予定が変わりました。あの姿、ひさしぶりに胸が躍りましたよ」


「……美幸をそこまで言わせるやつとは……それは興味深いな、一体誰なんだ??」


「………会長、すみませんが秘密です♡」


「な、なにっ!?」


 驚く生徒会長だったが、副会長の森美幸は笑みを向けるだけなのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あとがき


 今回の話で導入部分が終わりました。次回から物語は本格的に展開されます!


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