実力披露!?②

 実力の差なんてものは語るまでもなかった。


「……はぁ、はぁ、はぁ」

「………こんなものか」


 睨みをきかせながらも息切れする南。それに対して俺はというと平然としている。


「な、なんで……全部避けられんのよ、あんたの運動神経じゃ無理でしょう?」


 ありえないと言いたげな顔をしている。確かに南の動きは悪くない。

 洗練されたパンチに、時折見せるアクロバティックな行動。


 おそらく大抵の男子なら南には歯が立たないだろう。


 男女の筋力差なんて度外視できる、そんなテクニックを南は持ち合わせていた。


「……それじゃあ、今度は俺の方からいこうか」


 意味もなくネクタイを緩めて外し、髪をかきあげる。


 いっぺん、やってみたかったんだよな!

 これ!!!


 なんて内心では少し興奮してしまってるが、それは表には一切ださずクールぶる。


「……か、陰月なんかのへなちょこパンチなんか怖いわけ……ないんだから!」


「……そうか」


「……そうよっ!」


 息を整えつつも声を荒げながら俺を威嚇してくる南。目からは闘志がほとばしっている。


 ……ふっ。殺気をだしてもまだ睨んでくるか。


 そう少し関心していると前から急にすばやい蹴りが飛んできた。


「……陰月なんかには負けられないっっ」


 強烈な右足の蹴りが頬を掠めたのか、右のほっぺがヒリヒリとする。


 ……これはじかでくらったらやばいな。


「……っち。仕留め損ねた」

「……そうだな。今のは少し危なかった。だから俺も本気でいかせてもらう」


 土壇場での馬鹿力。

 油断していたら痛い目を見る。そう感じた俺は、すぐさま構えに入った。


「……なんとなくそんな気はしてたけど、陰月。あんた武術の経験あるのね」


 南はため息を盛大につきながらも、口角を上げた。


「それじゃあ、いざ!!」

「……ああ、いくぞ!」


 掛け声と共に、俺と南は本気で拳をぶつけあった。


♦︎♢♦︎


「……陰月、あんた……強すぎ……」


 屋上で大の字になって横に寝そべる南に対して俺は見下ろすかたちで立っている。

 5分ももたなかった。


「……もう立ち向かってこないのか?」

「……無理無理。勝てっこないの分かったから。格闘においては正直、誠以上かも」


 俺に対してさっきまで侮蔑の視線を向けていた南だったが、なぜか今は穏やかな目になっている。


「それで完膚なきまでにやられた南に聞きたいことがあるんだが」


「嫌な言い方ね、それで何??」


「どうしてそこまで相澤のために行動できる?

 あいつの何がお前をそこまで引きつける」


「まぁ……言いたくないけど言うしかない……か」


 拳を見せつけた俺を見て南は苦笑いをして答えた。


 声音が変わる。空気が変わる。


 南は目を細めて語り出した。


「……私にとって、誠はね。全部なの」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あとがき


 少し短めですいません!

 次回は南視点での話になります。


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