実力隠しの俺、賭けにでる?
「お昼またどうでしょう?」
昼下がりでの教室にて。
昨日同様に爆弾発言をしてきたのは、暁だ。
はぁ。なんで昨日から暴挙にでるんだ……そういえば副会長に絡まれてからか?
こんな日が続くようになったのは。
「……ごめんね、陰月くんには先約が入ってるの」
「……なっ、えっ、ど、どういうことですか!」
そういえば、あの朝の騒動の時に暁と夢島はいなかったな。戸惑いを見せる暁。その背後につく夢島もピクリと表情筋が動いた。
「……私と陰月。その」
こちらをチラチラと見ながら頬を朱色に染める南。その様子を見て黙ってなかったのは夢島だった。
「う、嘘でしょ」
「……」
「どういうこと? あなた一体」
「はあ。まあそういうことだから」
俺がため息交じりにそう言うと、暁はにらみを利かせ一方、夢島は唇を噛んで俯いた。
「それでいいんですか? 陰月くんっ!?」
「ちょ、ちょっと……焦りすぎたみたいね。不覚だったわ。行きましょ、暁さん。分が悪い」
「えっ……」
暁の腕をつかみ教室の戸へと歩き出した夢島。
俺はその二人の後ろ姿を見るや否や、愉悦に浸る。
ふっ。南と付き合った第一のメリットはこれだ。
暁と夢島の暴挙も、俺に彼女ができたとなれば話は別になる。
正直言ってこれ以上振り回されるのはごめんだ。
だから—————
「……一緒に食べるか。南」
「うんっ。そうだね」
俺はこの関係を利用する。
♦︎♢♦︎
それからは、なんて事ない日常の一日が続いた。
暁、夢島に絡まれることもなければ相澤に馬鹿にされることもない。
穏やかでつつがない平和な一日だった。
「ねっ。一緒に帰ろっか」
放課後、身を乗り出してそう言ってくる南。
その後方みると、相澤が暁と夢島に絡んでいるのが目に見える。
あの調子だと2、3日が潮時か。
可愛いらしい声で、女子高生らしい匂いをだしながら頬をぷくぅと膨らませる。
「もうっ。聞いてる? 一緒に帰るよ」
「あぁ……帰るか」
「あっ、あと。昨日みたいに急に用事がっ! とか言って帰るのはなし。それから怖い道もなし」
指をたてて禁則事項をつらつらと並べてくる。
「分かった、分かった。帰るぞ」
気怠げに荷物を整理して俺と南は昇降口へと向かっていった。
『こっからだぞ! 気合い入れてくぞー!』
上履きから学校指定のローファーに履き替え校門を出ると運動部の声が耳に響いてくる。
野球部だろうか。サッカー部だろうか。
うん、知らんけど。
「何か、さ。陰月は部活しないの?」
「……する気はないな」
「そっか」
「あぁ」
肩を並べながら、時に顔を見合わせ、何てことない会話をする、そんな俺たち。
表面上は立派なカップルだが腹の底ではお互い違うことを考えているのだろう。
よそよそしさのある空気の中、俺は口を開く。
「……なんで相澤に執着するんだ?」
「……えっ」
息を呑んだ音がする。南の足が自然と止まった。
これはいわば賭けだ。あまり期待はしていないが、南真奈。彼女は最適なピースになりうるかもしれない。
「……な、なんで」
明らかに動揺している。目があっちにいってはこっちにいっている。
(ば、バレたっ!! 私の思惑っ!!)
とでも思っているのだろうか。
「いや、だって相澤にだけベタ惚れしてんの見てて丸分かりだからな」
「……ち、ちがっ」
「何がそこまでお前を突き動かす? 相澤の顔か? 成績か? カーストか?」
「……い、一体な、な、なんなのっ!?」
南は唇をあわあわと震えさせながら言ってくる。
少し早急だったか。
まっ、場所も場所だしな。
「……すまん。彼氏だからつい嫉妬した」
「も、もうっ………びっ、びっくりした」
ふぅと息をはき冷静になろうとする南を尻目に俺は一人思考を巡らせていた。
場所は屋上。日時は明日の放課後。
そこで、決着をつけよう。
見切られる前に動いておかないとな。
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