生徒会室にて②

「ねえ、あの子生徒会に入れるってどういうこと? とおる~」


 陰月礼人が去った生徒会室にて。生徒会長—夢島徹ゆめじまとおるに懐疑的な視線があちこちから寄せられた。

 毅然としているのは副会長の森美幸のみ。生徒会書記ロリ担当——赤羽美沙あかばねみさは続けてそんな副会長にも声をかけた。


「それに~美幸もなんか冷静すぎるっていうか~。あの子そんなに凄いの?」


「俺はまだわからん。まあ美幸は何か知っているみたいだが」

「えっ。会長、私に振るんですか?」

「だって美幸のお気に入り……彼なのだろう?」


 真紅の瞳で捉えられる森美幸。彼女は観念したかのように「はあ」と深めのため息をついてから口を開く。


「まあ、お気に入りだからといっても


「ふっ。何を言う。お前……実力者以外興味ないくせに」


「ん~。もうっ! 二人して私を置いていかないでっ!」


 赤羽美沙は、生徒会長と副会長に不満を述べた。「ね、まなぶもそう思うでしょ?」と言って頬をぷくうと膨らませる。


「……興味ない」


 ぶっきらぼうに、無愛想にそう一蹴してくるのは生徒会会計真面目担当——金切勉かなきりまなぶ


「ん~勉はほんっとにつれないな~。ね、ねえ。私、あの子見極めてきていい?」


「ふっ。まあ美沙がちょっかいを出す分には構わんさ。そこで潰れればそこまでの奴ってことだしな」


「……私は、ノーコメント」


 赤羽美沙が、陰月礼人に手を出すことに否定はしない二人。彼女は存在感を消している金切勉を尻目に陰月礼人をターゲットにすることにしたのだった。


「……ふふっ。つまんないやつだったら承知しないからねえ?」


 嗜虐的な笑みを見せてから彼女は生徒会室を後にした。


♦♢♦


 やられた、カマをかけられた。


 生徒会室を出たあとの俺は、一人頭を抱えこんでいた。きっと生徒会長が夢島の兄であるということは本当だろう。だが………あの時の会話は全部俺を試すための

ブラフ。シスコン感あふれていたが、今思えばあれは全部演技だったのだろう。


 く、くそ……やられた。


 俺は思考を巡らせ対抗策を瞬時に練る。生徒会長に目をつけられたということは今後、生徒会全体と戦っていくことが推察される。


 俺は表立って行動はしたくない。やはり、南を成長させ隠れ蓑にさせるしか……。


 なんて色々と考えていると―――


「やあ、生徒会候補生くん」


 背後から、ロリ少女が声をかけてきた。

 桃色のツインテールに小柄な体、まさにロリと誰しもに言われそうな容姿をしている。


「……候補生になったつもりはありませんけど」


 生徒会書記? 会計?

 そのあたりは分からないが、何かもう早速仕掛けてきたようだ。


「どんな手段で美幸の興味を惹いたのか知らないけど……」


 少女は俯いてそういった後、続けて。


「……私があなたを潰してあげる♡ 正直、遊び相手が欲しかったんだよねえ」


 甘ったるいあざとい声で俺に人差し指を突き付けてきた。


 ……なるほど。



 会長のそんな声が頭に響いてくる。

 「はあ」と思わず、俺はため息しかつけなかった。 

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