その"陰"は爪をひた隠す〜美少女が目を離してくれない〜

脇岡こなつ(旧)ダブリューオーシー

実力隠しの俺、今日も馬鹿にされる

「くくっ。俺、またテスト一位だったわ〜」

「流石、誠ね! かっこいい〜。私は2位よ!」

「チッ。相澤と真奈は相変わらず、天才だな〜。俺7位!」


 はぁ。こいつらは、俺の存在に気づいてないのか……。さっきから、俺の席の周りでぺちゃくちゃぺちゃくちゃ喋りまくりやがって。

 うるさくて、眠れやしない。


「それに比べて、陰月は……な!」

「ぶふっ……。つっこんでやるなって相澤」

「そうよ! クラスだからって馬鹿にする必要……ふふっ。ないでしょ」


 なるほど。こいつらは、俺を馬鹿にするために俺の席まで来てわざわざテストの話をしにきた、と。ほんと暇人な奴らだ。


「なぁ……。寝たふりしてないで何とか言えよ〜」

「クラス最下位ってどんな気持ちなんだ〜。ははははははは」


 ガチでクソみてぇな奴らだな。『ちょ、ちょっと言い過ぎだって〜』とか言ってる南真奈。

 お前も同類だぞ。


 まっ、どうでもいいけどな。


 中間テストの結果が返却されてからの休み時間。先生がいないのをいいことに好き放題言いまくってるこいつら3人組は、カーストトップのリア充どもだ。


 一人目は、相澤誠あいざわまこと。学年一位のイケメンでクラスの人気者。性格はクソだと思うが、女子受けは抜群。

 ……結局、顔かよ。ふざけんな。


 二人目は、南真奈みなみまな。学年二位の美少女で可愛いと有名の女子。俺もビジュアルはいいと思う、うん。ビジュアルはな。


 三人目は、家塚鳶尾いえつかとびお

 学年7位の雰囲気イケメン男子。クラスのムードメーカーと言われる男だが、俺に対する扱いだけ最悪。俺のこと嫌いすぎだろ。


 まっ、こいつらだけじゃなくて……周りも俺のこと嫌ってんだろーけどな。


 チラッと教室を見回してみる。周りの奴らは皆クスクス笑ってるか、こそこそ話をしていた。


 誰か止めてもいいもんだと思うんだがどうでもいいか。


「なぁ……。陰月って何でそんなに出来損ないなの? 今回のテストだけに限った話じゃなくね? お前、体力テストも一番下。クラスのカーストも1番下。オワコンすぎだろ」


「……まあまあ、鳶尾いってやんなって〜」


 はぁ。早く先生来ないかな。先生きたらこいつら……大人しくなんのに。


 イラつき初め、貧乏ゆすりをしていると……俺の願望通り先生が姿を表す。


「……よいしょ、よいしょ」


 何やらたくさん教材やらプリントやら持っている様子。


「先生〜。持ちますよ、手伝います〜」

「俺も〜」

「私も〜」


「あぁ……いつもありがとう。相澤くんに家塚くんに南さん」


 猫被りどもが。心の中でそう悪態をつくと同時に俺は睡魔に勝てなかったので眠りについた。


♦︎♢♦︎


「何度も何度も言うが、陰月、お前は授業中にねるな!」


 放課後。何故か俺は呼び出しをくらっていた。なんで、こんな目に。


「……それはすんません」


「……今回のテストも悪かった様だし、反省しなさい! これじゃあ、いい大学にいけないぞ!」


 まぁ、今高1だし。別にっていいだろ。


23


 って、やっぱりまだ眠いな。欠伸がでそうだ。


「おい、聞いてるのか? また寝そうになってるが」


「……あっ、はい。すんません」


「はぁ。君は一体普段何をしてるんだ? 毎日眠そうにしてるが……どうせ夜更かしばっかしてるんだろ」


 まぁ、家にいる時間は勉強と筋トレばっかだな。あっ。あと漫画。


「……ははは」


「はぁ……誤魔化す、か。まぁいい。次、寝たら親御さん呼ぶからな」


 ギロリ、と鋭い眼光が飛んでくる。はぁ……親を呼ばれるのはだるいな。もうサボれないか。


「わかりました、反省します」


「よし、言質とったぞ? わかったら帰りなさい」


「……はい、失礼します」


 重みのある戸を開いて廊下に出ると、腕組みした女子が待ち構えていた。


「……あなた、悔しくないの??」

「………は?」

「は? じゃなくて、悔しくないのって聞いてるの」


 いやいや、どういう展開だよこれは。俺の目の前で偉そうにしているこの女子は、夢島莉央ゆめじまりお

 同じクラスで学年3位のあの南に匹敵する美人ではあるが。


「……なんで、夢島が??」


「馬鹿にされて平気そうにしてるあなたが気にくわないから文句いいにきてやっただけよ」


「それはどうも……」


「って、やっぱりあんた凄いクマね。普段何してるの?」


 おいおい。今度は先生と全く同じ質問かよ。


「……まぁ色々と」

「ふーん、そっ」

「それじゃっ。俺帰るから」


「………あなた、だしてないでしょ……」


 彼女の横を通った瞬間、そんな声が耳に聞こえる。ギクッと体が震えたがすぐに平静を装った。


「……意味不明だな」

「ええ、意味不明ね」


 こいつ、まさか分かってこんなこと言ってんのか……。


「……ふふっ。良い顔見れたわ。私、先帰るわね」

「……………」


 夢島莉央。奴は危険かもしれない。俺は切にそう思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る