実力隠しの俺、妹にも相変わらず馬鹿にされる
いつからかは忘れたが、中学生になってからのことだったと思う。実力隠しに憧れたのは。
圧倒的なまでの力。それを見せびらかしたりせずに裏で力を発揮するダークヒーロー。
やっぱり、かっけぇな。
ニヤリ、と少し口角を上げながら家の扉を開く。玄関にある整えられていない乱れた靴を見ると……俺は思わずため息をついた。
「……親いねぇのかよ」
まぁ、親がいないのが問題ではない。
「……はぁ。クソキモ馬鹿オタが帰ってきた〜」
「……靴も放ったらかし、食べ終えたポテチの袋もそのまま……相変わらずだな、お前も」
ただでさえ、学校で嫌な思いしたのにこの仕打ち。
こんなのが、妹だなんて思いたくない。
そう。親がいないのが問題ではない。妹がいるのが問題なのだ。
「……きっしょ。あんたには関係ないっしょ。
あはは」
はぁ。だらしないったらありゃしない。妹の花音は、スナック菓子をぼりぼり食べながらリビングでTVを見ては、たびたび笑っている。
「………俺、上いくから」
「チッ……。話かけてくんな、落ちこぼれが」
お前も充分落ちこぼれだろーが、とは思ったが突っ込まずに無視して俺は階段を上がった。
♦︎♢♦︎
「さて、と」
自分の部屋に入った俺は、早速最難関大学の赤本を開いた。
「やりはじめますか」
首を一回ししてから、問題にとりかかる。高1から赤本解いてるの? と驚く者もいるだろうが、俺はすでに高校範囲の勉強は中学生の時には終わらしていた。別に、中学が超頭の良い進学校だったわけじゃない。
実力隠しに憧れ始めた当時の中学ん時の俺は独学で勉強をガチったというだけだ。
まぁ、あの時は一部のスポーツも頑張ってたっけ。今は筋トレになってるが……。
手元の問題をすらすら解いていき、こんなもんか……なんて思っていると。
『……あなた、本気だしてないでしょ』
夢島の声が脳内に呼び起こされた。
———ポキッ。
シャーペンに力が入り、芯が思わず折れてしまう。
はぁ。考えないようにしてたのに……。夢島莉央。実力隠しを邪魔する様なら容赦しない。
問題を睨みつけながら俺はため息をつく。
まぁ、大丈夫か。実力隠しは現時点では俺以外の誰も知らないはずだ。
と、一人で納得していると。
ドンッ。
「……ぷぷっ。クラス最下位のくせして、◯大の赤本解いてるとかばっかじゃないの……」
いきなり、ドアが開かれたと思ったらこれか。ノックくらいしろ。花音め。
妹の花音が、俺の勉強机に来てわざわざ馬鹿にしてくる。
お前も、あいつらと一緒か。
あいつらとは、あのリア充三人組のことだ。
俺を見下すのはそんなに楽しいか?
「………何とか言ったら? って。なにこれ。目標?? 腹筋毎日300回以上? あほらしーい」
花音は、俺の筋トレ目標に指を指して笑う。
まぁ、その目標。めっちゃきつかったけどもう大丈夫になってきたから今度は腹筋以外にしようと思ってるけど。
「……そんなダボダボの服着てださいし目つき最悪だし……あーあっ。何でこんなのが兄貴なんだろ」
あぁ。そっくり返してやるよ、その台詞。
何で、お前みたいなのが妹なんだってな。
「いいから、出てけ……」
「言われなくても……」
そう言うと、軽い足取りで俺の部屋を出て行く花音。
はぁ。やっといったか。
そういえば、明日から……他クラスとの交流会があったけ。学校だるいな。
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