動き出した関係性

 おかしい。

 あまりにもおかしい。


「……もういいかしら」

「もう面倒ですっ!」


 こんなはずじゃなかった。なんで夢島と暁は俺になびかないんだ!


 俺こと相澤 誠は無性に腹が立っていた。これも全部陰月のせいだ、そうあいつのせい……いやそもそも何で陰月なんかにあの二人は目をつけたんだ?


 同時に陰月に対しての不信感も抱く、そんな週末を俺は過ごしていた。




 そんな週明け、月曜日の朝。俺は真奈に計画についての変更を言おうと思い、声をかけた。


「……おい。真奈っ!」

「……ごめん、誠」


 目を合わせようとせずそのまま立ち去る真奈。


 は? この俺を無視するだと……。


 今までデレデレしてきたあの真奈が?

 俺を崇め瞳をキラキラさせてきたあの真奈が?

 俺のこと好きで好きで仕方がなかったあの真奈が??


 俺は目を見開いて固まることしか出来なかった。

 ……一体全体何がどうなっていやがる。


♦︎♢♦︎


「……おい、陰月……ちょっと面貸せよ」


「……いつにもなくイラついているようだな」


 朝方の人の少ない教室の中。

 相澤のやつが肩を組んできて早々にそう言ってきた。


 南のやつ……ちゃんと言いつけは守ったか。


 胸中の考えは表には出さず平静を装って続ける。


「……どうした、南に愛想でも尽くされたか?」

「て、てめぇ……何か弱味でも握りやがったな?」

「……俺がそんな力のないやつだってこと、お前ならよく分かってるはずだ」


「…………っ。そ、それでも何か卑怯者のお前のことだ、真奈の知られたくないことでも知って」


「それより、夢島と暁の方が大事だろ」


 瞳を細めて強めにそう言うと、相澤は頬を引きつらせる。俺はそんな相澤の機微な表情の変化を読み取ると話の方向性を瞬時に定めた。


 おいおい、頼むぞ……お前にはしっかりしてもらわないとこっちが困るんだ。


「……夢島と暁の二人を虜にさせれば、南も嫉妬してお前のとこに戻るんじゃないのか?」


「……な、なにっ?」


「きっと相澤のこと試してるんだよ……クラス最下位の俺にいや全てが相澤に劣る俺に南が味方する訳ないだろ?」


 自身満々に言うことではないが、俺は胸を張って堂々と言ってやった。


 今はまだ南との関係性が確立していない。確立するまでは南と相澤を変に接触させるわけにはいかないのだ。


 だから、相澤の意識はそれまで暁と夢島に向け続ける必要があった。


「………一理あるな。ああ見えて真奈は策士だからな、あいつがその気なら俺は絶対暁と夢島を惚れさせて……」


「……あぁ、頑張れ」


 全てがうまく運びすぎてることに思わず口角

が上がりそうになるも俺は相澤を鼓舞するのだった。


♦︎♢♦︎


 その頃、夢島と暁は———


「な、何か凄く嫌な予感がするわ」

「そ、そうですね、今悪寒がしました」


 二人とも警戒心をいっそう持ちながら学校へと歩みをすすめているのだった。

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