実力隠しの俺の生意気な妹が変化しつつある件について

 はぁ……疲れたな。

 夕刻時、やつれた俺は一人帰路を辿っていた。

 玄関の前。生意気な妹が一人仁王立ちしているのが目に入る。


「……やっと帰ってきた」


 頬をぷっくら膨らませている花音。

 な、なんだ……どういう風の吹き回しだ??


 花音は普段、俺を馬鹿にすることが日課の一つのはずだ。

 そのはずなのに……こんな可愛らしい態度をとるなんて。


 いや生意気な妹に変わりはないけど。


 俺は警戒心を露わにしながら口を開いた。


「何の用だ?」


「………あ、あのさ。


「は??」


 俺が眉間のしわをよせると、花音は「えっと」とたじろいだ。

 なんか様子が変だな。誰かに何か吹き込まれたか……それとも俺が何かやらかしたか。

 いや、後者はないな。だとすると誰かに俺のことを吹き込まれたか。


 思考を巡らせずとも、その者の検討はついた。


「暁か夢島……はたまた両方か」


 それしかない、と一人結論づける。

 はあ、と深めのため息をついてから俺は花音にジト目をむけた。


「っっっ! やっぱり」


「俺がそんなすごい奴に見えるか? そもそもどこからそう判断したんだ?」


「いやだっておかしいでしょ? あんなに可愛い女子が彼女とか抜かすし、今日に関しては胸デカ美人と一緒にいたし」 


 ん? なんで生意気妹の花音にそんなこと知られてるんだ?

 あの時、尾行の気配なんて感じなかったぞ……。


 あの時というのは、副会長の胸デカ……ごほん、森美幸の家に向かった時の話だ。特に何もなかったのだが、そこの場面を偶然見られたということか。

 全く最近は何かと不幸に見舞われるな。


「それは、偶々だ。お前の考えていることは何もない」


 真顔でガチトーンで目を見ながら言うと花音は、にぱあと満面の笑みを浮かべながら


「そうよね。クソバカキモオタが、実はすごいやつだったなんてないよね。何私、変なこと思ったんだろう」


「………」


 変に繕っていた花音はすぐにいつも通りの花音に戻った。チョロいというか単純というか、花音なんてそんなものか、と改めて認識させられる。


「……いいから早く家入るぞ」


「クスクス。どうせあの可愛い彼女も嘘っぱちで見栄~」


「はいはい」


 いつになく上機嫌な花音。全くどんだけ俺が嫌いなんだよ。まあ俺も嫌いだからどうでもいいけどな。


 口笛を吹く花音に続いて欠伸をしながら俺は家の中に入るのだった。


♦♢♦


 妹の罵詈雑言を適当に受け流しながら自室に戻った俺。今はベッドに体を預け思案している真最中。


「はあ。


 仰向けになりながら、俺は天井の光を手でつかんだ。


―――




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あとがき


 更新遅くなってすみません。


 

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