第16話 とんでもインタビュー その2

「お、オホン……大変失礼しました。で、次の質問だけど、プールで溺れた岸辺さんを助けたのは沢藤君で間違いない?」


「ああ、それは間違いないです」


 そこからは昨日起きた出来事を詳細に話していく。

 行った救助については、当初はいやらしい考えもあったが、そこはなるべくオブラートに包んで話す。夏帆姉も刺激してはいけないし、墓穴を掘ってはいけない。


「情報によると、人工呼吸もしたと聞いたけど?」


「あ、ああ~……やっぱそういうことになってます?」


 うっ……やはり、そこは見逃してはくれないか。新聞部だけあって、さすがに情報が早い。すぐさま誤解を解こうとするが、時すでに遅し。その質問とほぼ同時に、案の定、夏帆姉が取り乱した。


「う、嘘でしょ!? 柚希君チュウしたの? そんな得体のしれないダイオウグソクムシと!」


「グソクムシ呼ばわりしない! それに緊急事態だったんだよ!」


「ということは人工呼吸したのね! よその運動部の男子たちが、そこをめっちゃ気にしてんのよね~!」


 竹雪さんのテンションが急に上がり、俺の答えを聞くのを待たず手帳に情報を書きなぐっている様子だ。


「そんなのないよー! 柚希君とはじめてチュウするのは私のはずなのにー!」


「ちょ、ちょ、ちょ!!」


 夏帆姉なんて、声を上げて泣き出す始末である。まずい、まずい、まずい! この展開はさすがにまずいぞ。俺は慌てて説明する。


「いや、ちょっと待って! してない! してないです! 人口呼吸をしようとしたのは確かだけど、その前に岸辺さんが現世にお戻りになったんです! 施したのは心臓マッサージだけ!」


「……なーんだ、つまんないの」


 その答えを聞くと、竹雪さんは少しがっかりした様子だった。


「でも柚希君、おっぱいは触ったんでしょ?」


「はい? お、おぉぱぁ?」


「だって、心臓マッサージしたってことは、そのダイオウグソクムシの胸に手を置いたってことじゃん! 力も込めただろうし」


 いわれてみれば、確かにそうだったかもしれない。人工呼吸ばかりに気を取られて意識してなかったが、あの豊満な胸に手を……。

 俺は岸辺さんの胸の感触を思いだそうと、昨日の記憶を呼び起こす。


「や、やっぱ触ったんだー! ひ、ひどいよ~! 柚希くんが最初に触るおっぱいは私の筈なのにー!」


「ちょっ! 屋上で変な発言しないで!」


「胸は触った……っと」


「そこ! メモらない!」


 こんな感じで、とんでもなインタビューは続いていくのだった。

 ますます変な噂が流れないだろうか、誠に心配である。

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