第32話 求愛宣言 その4

「もう、どうすれば伝わるの!!」 


 煮え切らない俺の態度に、岸辺さんが少しずつ苛立いらだち始めた。


「私、運動部ではそこそこ人気だし、それなりに告白とかされてきたし……いや、むしろめちゃくちゃ告白とかされてるし」


 なんか、さりげに自慢入ってないか。


「胸やお尻にも自信あるし、きっと沢藤君の自慢の彼女になれると思う」


「う~ん、そう言われましてもねぇ~」


「え~、まだダメ~? その、経験はないけど、男の人のこと満足させるテクニックとかも……努力する」


「それとこれとは話が違います」


「うう、沢藤君手強い。スランプの時より心折れちゃう。私って、そんなに魅力ないかな……」


「岸辺さんに魅力はあると思います。俺、体験入部の時、女神様と思いましたもん」


「め、女神? な、何か惹かれるものあった?」


かれましたね」


「ほ、ほんと!? じゃあ、恋人OK?」


「今はどんいちゃってますが」


「ガクッ。もう、沢藤君は私をどうしたいのよ!」


「恥ずかしいところ見られたからって、すぐすぐお付き合いは早計だと思うんです」


「花園の情事見られたからは関係ないの。あんなのは大義名分であって、私、単純に沢藤君にかれてるの」


「だから、俺もいてます」


「もう……それやめて。沢藤君の為ならエッチなこともしばらく我慢するから。普通の子になるから。だからお願い。この思いを受けとめて!」


「本気なんですか?」


「マジの本気。こんなの嘘でいえる女の子いると思う?」


「ですよねぇ」


 どうやら、これはそう簡単に諦めてくれないパターンらしい。

 仕方ないか、どうせいずれは通らねばならない道だし。俺は、意を決し、岸辺さんを夏帆姉に会わすことにしたのであった。


「すいませんけど、ちょっとついて来てください」



♢♢♢



「ねぇ、どこまで連れて行くの?」


 俺に案内されるがまま、うしろを歩く岸辺さんが問いかけてくる。


「ついてくれば、わかりますよ」


「もしかして、人気ひとけのないところで二人きり? ヤダ、そんないきなり? ちょっと心の準備が……」


「違いますよ!」


「ちぇっ、あの日の続きかと思ったのに」


「エッチなのは我慢するんでしょ」


 岸辺さんの発言はいちいちや汗をかかせてくれる。


「俺が所属している部の部室に行くんです。どうしても俺の恋人になりたいんだったら、岸辺さんは会わなくちゃいけない人がいます。かなり厳しいことになりますんで、覚悟しておいてください」


「ふ~ん、のぞむところ」


 こうして、俺たちは部室へと到着する。


「ふぇぇぇん、柚希君遅いよ~。お姉ちゃん寂しかったんだから~」


 ドアを開けるなり、夏帆姉が飛びついてくる。俺は勢いにのまれ、下敷きになった。


「え!?」


 岸辺さんも驚愕の表情を隠せないようだ。


「岸辺さん、この人です」


 俺は馬乗りになる夏帆姉を指さし、答えた。

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