第15話 とんでもインタビュー その1
「じゃあ、さっそくなんだけど沢藤君。インタビューを始めてもよろしいかしら?」
「ええ、大丈夫です」
インタビューだなんて、えらく大層だなぁ……なんて思いつつ、今朝の約束通り、俺は屋上で竹雪さんからの取材を受ける運びとなった。竹雪さんはボイスレコーダーを片手に、質問事項の書いてるであろうメモ帳を読み上げていく。
「岸辺さんと面識はあったの?」
「部活の体験入部で知り合いました。それから少し話すようになったって感じですかね」
「ええ~! 柚希君、一人で部活選んでたの? どうりで最近すぐいなくなるわけだ!」
夏帆姉が会話を
いつもお昼を過ごしている屋上で取材を受けているため、必然的に夏帆姉も取材に同席してくるのだ。
「か、夏帆姉……静かにして」
「むぅ~……お姉ちゃんと一緒の部活に入ろうって言ったのに」
取材を了承したのはまずかった。おかげで夏帆姉に部活選びの件がバレてしまう。もう『部活のあの子と編』フラグも崩壊だな、こりゃ。
「ウォッホン。続けていいかしら?」
「あ、すいません。どうぞ」
竹雪さんは気を取り直して、と言わんばかりにまた質問してくる。
「知らない間柄ではないことは分かったけど、具体的にはどういう関係かを教えて。 知り合い? 友達?」
「二~三度、会話したくらいですから、友達まではいかないと思うんですけど」
「本当にそう?」
「ん? どういう意味です?」
「けっこう親しげだったらしいじゃない。実は親密な仲だったんじゃないかって噂も出てるんだけど……そこんとこどうなのかしら?」
「ええっ? まだ入学して数日そこらですよ?」
「向こうはどう思ってるかわからないじゃない。『運動部のアイドル! 新入生と電撃恋愛!?』なんて記事になったらかなり面白いと思うのよねぇ」
「そ、そんな事実は一切ないですから」
運動のアイドルということで、岸辺さんの話題は新聞部にとっては一面記事レベルらしい。
それにしても電撃恋愛って……いや、確かに更衣室で迫られはしたが。でも、それはみな知る
「ねぇねぇ、柚希君。その岸辺さんって女の子なの?」
「え? まぁ、そうだけど」
「……もう悪い虫が」
俺の答えに、夏帆姉の目に闇が宿る。こりゃ、まずいことを考えているときの目で間違いない。
「な、何もないってば!」
「柚希くんったら……いけない子。浮気はダメだよ? めっ!」
夏帆姉がほっぺを膨らませ、俺の腕に抱きついてくる。これは、かなりご立腹の様子だ。
「別に夏帆姉と付き合ってもいないのに、浮気もなにもあったもんじゃないよ」
「だってぇ……人食い鮫が柚希君を狙ってるぅ!」
「人食いって……」
「まずは
ボソボソとまたもや殺人計画を
「ねぇ、さっきからいちいち口を挟まないでくれる? 取材の邪魔なんだけど」
しゃしゃり出る夏帆姉にイラつきだしたのか……竹雪さんがため息をつき、夏帆姉にガンを飛ばす。
「あ? 誰に向かって口聞いてんの? 私、今最高に機嫌悪いけど……死にたい?」
「ひっ……」
逆に修羅の如く睨み返す夏帆姉の迫力に、竹雪さんは圧倒される。震えたまま押し黙ってしまった。
「す、す、す、すいません。夏帆姉とりあえず取材終わってからね? そのあと話聞くからね?」
「うん……」
まず、この場で死人が出かねない勢いだ。これ以上、夏帆姉の逆鱗に触れないよう取材をこなさなきゃ。
くそ、なんで俺がこんな気を揉まにゃあならんのだ。
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