第35話 活動! その1
「はい、柚希君♪ あ~ん」
「やめてよ、岸辺さんも見て……むぐぐ」
相変わらず夏帆姉のあ~ん攻撃を喰らう俺であった。屋上の時とは違い、人目が少なくなったのがせめてもの救いか。
「なるほど、そういう手もあるのか。じゃあ……沢藤君、私のもあ~ん」
それを見ていた岸辺さんが、自分の食べかけのチョココロネを差し出してくる。
「ちょっと、やめてください。そんな病原菌の入ったパンで餌付けしないで」
「失礼ね、乙女の食べかけのパンよ。嬉しいよね、沢藤君」
「それよりも俺をペット扱いしないでほしいな、夏帆姉」
「え~、だってぇ」
三人で部室のテーブルでお弁当を食べる。俺たちはいつもの夏帆姉のお弁当、岸辺さんは購買で買ったパンの類を食べていた。
ひと紛争ありはしたが、なんだかんだと落ち着いて進むこの時間に安心する。昼飯が食えないと午後の時間は地獄だからな。
「でね、この部活はどんな活動をしているの?」
岸辺さんがふと
「そんなもんないですよ。お姉ちゃんと柚希君がイチャイチャするための部活ですから」
「はぁ? そんなことってある?」
「何言ってんだか……最も優先されるべき事項です」
「よく承認もらえたよね~」
「なんですか、別にあなたの入部なんか認めてませんから。不服ならいつでも出て行ってくださいまし。お出口はあちらですので」
「それは嫌。私は沢藤君を救うって決めたから」
「なんですか、お姉ちゃんが悪者みたいに……」
そんな会話を聞いている内に、ふと俺は思いつく。
「そうだ、ちょうど人手も増えたことだし……部室の掃除でもしようよ」
実のところ、ずっと空き教室になっていたことで、この部室はいらない備品や汚れが目立っていたのだ。今までの活動はアニメ見るとか、夏帆姉に付きまとわれるだけとかだったので、この際に少しは活動などというのもしてみたい。
「え~、今日やるのぉ?」
「柚希君は綺麗好きなの。嫌だったら、出て行ってもらっても……」
「わかった、わかった。やるわよ」
「岸辺さんもそうぼやかないで。自分の所有物とか置いてもいいんで」
「え~、それじゃあこのダイオウグソクムシが居座っちゃうよ。使うだけ使って、ポイしよ?」
「沢藤君のお姉さん? 心の声ダダ洩れよ?」
「別に心の声でも何でもないです。下等生物に言語が理解できるとも思わないので」
「ムッカ~! 人が下手に出てればいい気になって!」
「はいはい、喧嘩しない。喧嘩したら出禁」
「ふぇぇぇ~」
「あいたた、それはまずい」
「とにかく、女の子が過ごす部室である以上、汚いのは厳禁。わかったら返事」
「「は~い」」
こうして、俺たちは本日の活動を行う段取りを取り決めたのであった。
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