第18話 部紹介
俺は用意されたイスに座り、部の説明会を受ける流れとなった。
「
俺を勧誘してきた部長は
「私は国見。よろしくね」
隣に用意した席に座り、ウィンクを投げかける方は
「部員は先ほども申した通り、3年生の先輩が卒業してしまったので、私と国ちゃんの二人きりなのであります」
「女子二人だし、本当は女の子が良かったけど……そう贅沢も言ってられないよね」
「
「あ、いけない!」
国見さんが俺に向けて、自分にげんこつをするふりをし、舌を出して悪びれた。
西田さんはしゃべり方に少し癖があるが、国見さんは比較的ふつうのようである。ちなみに、二人とも2年生らしい。
「活動は主にイラストや漫画を研究し、自分の技術とすることを応援していく部活なのであります。そのための資料にはお金を惜しまない! これが我らのモットーでもあります」
「なるほど」
「はい! 西ティ部長の最近のハマりアニメはなんですか?」
「今推しのアニメは○○でありますかね? それに△△もいいですし、×××などもありますね!」
「わかりみ~」
またも謎ワードが飛び出してきた。それって日本語? アニメというからには何かのタイトルを略しているのだろうだが、それが全くわからんのだ。アウェイなこっち側の気持ちを考えない人たちである。
「ただ……好きなことを満足できるほどするには部費が足らず。さらには人員も不足していて、思うような活動ができていないのが現状なのであります」
「な、なるほどなのです」
どんどんそのしゃべり方に引っ張られてしまう俺。
分析するならば、活動規模が小さい、弱小部という印象だ。悪い部活ではなさそうだが、良い部活とも言えなそうだというのが率直な感想だ。正直、入るかどうかは迷うところ。
「おまけに新入部員が入ってくれなければ、存続も危ういのであります」
「それは大変ですね」
「だから、その、え~と、あの……お名前」
呼び方に困った様子で、西田さんがこちらを見る。
「沢藤と申します」
「さ、沢藤殿。じゃなくて沢藤君に、入部していただけたら手伝ってほしいことがあるのであります」
手伝ってほしいこと? 俺は首を傾げる。
「俺は絵描けないですし、特にできることはないと思いますけど」
「実はウチらね、今度の同人即売会に向けて執筆中なんだ。書き手二人だと手が回らないところもあるし、そこを手伝ってもらえると嬉しかったりする」
そうフォローするのは国見さん。
「その通り! 実は夏に地域の同人即売会があるのであります。売り上げ部数によっては活動費の大幅アップも見込めるでありますよ!」
……同人即売会? なんだ、そりゃ? またも聞きなれない用語が出てくる。
「アクキーや缶バッチの制作もしたいし、その他諸々とあるからね」
「あ、あの! 俺も質問良いですか?」
「はい! え~っと、さ、沢田殿!」
「沢藤です」
「そうそう。沢藤殿……じゃなかった、沢藤君!」
間違えすぎ。
そんなことより情報が渋滞している。話の展開に取り残されそうなので俺は慌てて聞いてみた。
「同人即売会って何ですか?」
「おお、よくぞ聞いてくれました! 同人即売会というのは文字通り、素人が同人誌を販売する場なのであります」
「同人誌? 雑誌か何かですか?」
「はい、同人誌とは同じ趣味・嗜好を持つ者同士が組んで作る本であります。一般誌と違って出版社を通さずに制作できますし、二次創作物なんかもOKなのであります。推しキャラ同士のあり得ないカップリングも自由自在なのですよ」
「な、なるほど」
ダメだ、熱量に押されてこれ以上の追及ができない。俺はこっそり携帯で調べてみると、すぐさまいかがわしい画像がたくさん出てきた。
「あの……調べた情報によると、同人誌って薄い本とか書かれてますけど? それに、人にお見せできな画像もチラホラ。これはどういう?」
すると、二人は顔を見合わせ、急にソワソワしだした。
「そんな改まって聞かれると、困るのであります」
あっ……察し。
これは明らかに全年齢じゃないものの制作に携わっている感じだ。
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