エピローグ

 もこもこのコートを着込んだロップは、同じくもこもこの赤いマフラーに顔を埋めながら、やってきたシュロに手を振った。


「悪ィロップ! 待たせたな」

「待たされた。ノーコンエルフとトリニティは、別ルートでとっくにダンジョン入り」

「やっべ。あとでどつかれるな」

「ノーコンエルフにどつかれたらお前の首はなくなる」

「マジで危ないよな。念のため防御魔術かけとこう」


 そう言いながら、二人は依頼を読み上げる。


「えーと、確かこのダンジョンは――古い魔術師の呪いを受けて、根枯れしたダンジョン、だっけ」

「です。とても小さいダンジョンですから、放っておいても問題は小さじ一ほどもないですが」

「小さいことからコツコツと、だもんな。ひよっこのダンジョン管理人にはぴったりだぜ」


 それでも、ダンジョンの手入れをしておくに越したことはない。

 またいつデザストルのような災厄がやってくるか分からないのだから。


 ダンジョンの持つ、魔力タンクとしての役割。そして、国を守るための結界の結束点という意味合い。

 そうして、ルクトゥンであるシュロ・アーメアが、ダンジョン管理人になったという事実。


 これからますますダンジョンの重要性は高くなってゆくだろう。


「ダンジョンの呪いについては、トリニティが分析中。……通訳が必要かは不明ですが」

「いやいや。お前の耳、頼りにしてるぜ」


 シュロがそう言うと、ロップは得意げに耳をひくひくさせた。


「さ、行くです。新米ダンジョン管理人さん?」

「あいよ」


 二人は廃墟となったダンジョンに足を踏み入れた。

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英雄には向かない職業~最強英雄、ダンジョン管理人試験に挑みます~ 雨宮いろり・浅木伊都 @uroku_M

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