恋愛観
「なぁ……二人は恋愛について、どう思う?」
学校からの帰宅後。
夕食も食べ終わり各自お風呂も済ませて後は寝るだけとなった俺達は、今日も今日とてリビングで思い思いに寛いでいる。
俺と里香は寝転がりながらスマホをいじり、翔子は本を手に膝を抱える様にして座りながら読書中。
相変わらずの動物パジャマに身を包み、というよりそれ以外のパジャマも見た記憶があまりないのだが。
ニワトリ姿の里香と、極端に鼻の短い……恐らく象と思われる姿の翔子。
そんな二人に、俺は何の気無しに思わず声をかけていた。
「え、どうしたの急に?」
スマホいじりをやめ、ガバッと顔を上げてこちらを驚いた顔で見つめる里香。
その瞳は爛々と輝いているような、そんな印象を受ける程、期待に満ち溢れた表情をしており。
まぁ実を言うと、俺はこの手の話題はあまり話した事がない。もっともそれは話題として話す相手が殆ど居なかったから、というのもあるのだが。
少なくとも歳近い異性は昔から両隣に住んでいるこの二人しかいなかったし、男友達も殆どいなかった。
だからこそ、俺の口からこの様な話題が出てくるのは嘸かし意外だったことだろう。
翔子も静かに本を閉じて、俺の話を聞こうと無言で耳を傾けており。
こちらとしては話題の一つ程度のつもりで声を上げただけなのだが、やはり年頃の女子は恋愛話が好きなようだ。
ソースは漫画。大抵出てくる女子は恋愛話が好物なキャラが多かったし。
とはいえ分かっていた事とでも、想像以上に乗り気な二人に俺は少し気圧されてしまいながら。
「いやー、今日クラスで俺達の話が上がってさ。そういえば二人の恋愛観? みたいなの聞いたことないなって」
「うーん? いまいち話が見えないけど?」
上手く説明出来ずに小首を傾げている里香に、俺はしどろもどろになりながらも。
「いや、俺がいると他の男子はお前達に声をかけにくいんだってさ。だから二人が異性との交友を増やしたいと思うのなら、色々と考えないといけないかなって」
「あぁ。そゆこと……」
取り合えず聞きたい事をそのまま聞いてみる事にした。
だけど、その内容は里香にとって期待外れだったのか、先ほどまでの楽し気な表情から一転、思案顔で返答を考えるように空に視線を泳がせる。
俺としては以前からも考えていたように、二人が多くの人と関わり合いを持ち知見を広げるのはとても良い事だと思っている。
それは同じ様に田舎から出てきた俺がそうしたいと思っているから。
特別異性の、とは勿論考えていないが、俺には俺の考えがあるように二人がどの様に考えているか、その確認はしておきたかった。
「そうだねぇ。私は別にすぐに恋人が欲しい訳でもないし、特別男子と仲良くしたい訳でもないから、別に気にしてもらわなくてもいいかな」
と、翔子。
そんな翔子の返答を聞いて里香もコクコクと頷きながら。
「いきなり話しかけられてもちょっと怖いし、今くらいの距離感で男子達はいてもらった方がむしろありがたいかなー」
二人は顔を合わせながら「ねー」と笑いあっているが。
俺としては少し複雑だ。
「本当にいいのか? 向こうじゃ同い年の異性なんてまともに居なかっただろ? 新しい出会いのチャンスだぞ?」
「べつに新しい出会いを求めてないっていうか……欲しい出会いは生まれて直ぐに貰っていたというか……」
ゴニョゴニョとこちらが聞き取れない小声でささやく里香に。
「ははは……まぁ亮君はそのあたり事をあまり気にしなくて良いと思うよ」
と翔子の発言で、この話題は纏まりを見せた。
最後に「まぁどうしてもって言うのなら亮君が良い人だなって思う男の子を紹介してくれれば私としてはありがたいかな」と言われはしたが。
紹介してもいい人と言われても、まだ二人くらいしか友達いないんだけど……と思いつつ。
少なくとも今の二人に恋人を作る予定が無いことを知って、どこかホッとした自分がいて。
何やらモジモジと照れた様相でゴロゴロと床を転がっている里香を見やり、翔子にはそれも気にしなくて良いと言われ。
言われた通りにそっと見なかった事にして、俺はまた自分のスマホに視線を戻した。
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作者より
長らくお待たせ致しました。
近況ノート更新しております。お時間ある方は覗いて頂けると幸いです。
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