前哨戦
騒がしかった園原先輩も先生に促され教室を後にし、恙なく始まった授業も前半戦を終えて。
今は昼休みを迎えていた。
本日は、朝に里香達から『お昼は一緒に食べようね』と脅迫紛いの誘いを受けている為、俺は二人を迎えに行くべく、まずは翔子在籍するの一年二組へと顔を出す。
教室には弁当を片手に机を並び替えて食事をする生徒で賑わっており、多くの生徒がウロチョロとしていた。これでは翔子を探すのも一苦労だ。
っていうか、いない?
もしやと思い、俺はそのまま隣のクラス、里香のいる一年一組へと向かう。
すると、そこには里香と、案の定翔子の姿が。更には、昨日の放課後に見た覚えのある女子生徒数人に『おまけ』が一人、固まってお喋りに華を咲かせていた。
その中でも、一際目立つ……というか、喧しい声で人目を惹いているのは、今朝ウチのクラスに襲撃してきたーー園原先輩。
まぁ良く考えて見れば、わざわざ俺の所にも来ているのだから、そりゃ二人の所にも顔を出すだろうという話ではあるが。
まさかこのタイミングで現れるとは……
これは間違いなく面倒な事になる。
俺は素早くスマートフォンをポケットから取り出すと、アプリを起動し、グループメッセージで連絡を入れた。
『なんか賑わっているみたいだし、お昼間はまた明日にしよう』
送信後、昨日同様にこっそりと中の様子を伺う。
放課後とは違い、幾分か人目があるが、あまり気にせず――いや気にはなるけど、二人の反応が、主に怒っていないかが気がかりで、俺は羞恥心に耐え忍ぶ。
ちょうど翔子が内容を確認したのか、スマホを片手にキョロキョロと辺りを見わたしながら、近くにいた里香へスマホの画面を見せて、内容を共有している所で。
翔子と、目が合う。
ドアの陰。屈みこみながら覗いていた俺の姿を、翔子はしっかりと見つけていた。
その時の翔子の顔は意地の悪そうな、何かを企んでいそうな表情をしており。
あぁ。もうダメだな、と諦めていると。
翔子がスタスタとこちらに向かってきており。
俺の前まで来ると、スカートが捲れないように抑えながら屈みこみ、小声で。
「面白い先輩に捕まっちゃったんだよね~。亮君だけ逃がさないよ?」
なるほど。翔子も先輩のペースに上手く噛み合わず苦労していると見える。
それならば仕方あるまい。
俺は覚悟を決めると、翔子を連れ、教室の中へと入って行った。
「やっぱり彼方だったんじゃない」
俺と向かい合うように座り、学食のラーメンを啜る園原先輩を前に、俺は黙々とカレーを頬張る。
俺の両サイドには里香と翔子が腰掛け、それぞれが好きな物を食していた。
普段は空気を呼んで場の会話を回す翔子も、この先輩は苦手なのか、俺同様黙々と箸を動かしており、どちらかといえば、里香がオドオドとした様子で俺等と先輩の様子をチラチラと窺っている。
そんな俺達の様子が面白いのか、俺達三人を見てうんうん頷きながら。
「噂通りの美男美女って感じね」
「……先輩。一体何の用事ですか?」
里香と翔子が美女なのは周知の事実だが、俺にお世辞を言ってくる辺り、何か思惑があるのが見え透いていた。
被害が俺だけならばまだしも、今回の一連の流れから、恐らく二人にも何かしらの被害を受ける可能性がある。それだけは何がなんでも防ぎたかった。
先輩ではあるものの、彼女を睨みつける様に威圧する俺を、園原先輩は何食わぬ顔で見つめ返し。
「そんな睨まないでよ。大丈夫。三人を不愉快にさせる様な事は、できるだけしないからさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます