提案
翌日。朝から俺達は昨日取り敢えず各部屋に仕分けた、私物の整理に追われていた。
玄関からリビングに続く廊下。
この物件の間取りは廊下にトイレと三つの部屋。
その為右側を俺の部屋。左側に里香と翔子の部屋。と振り分けた。
俺の荷物は送っていた家具等を含めても然程多くは無かったが、問題は女子二人。
「おまえ……こんなぬいぐるみまで持ってきたのか」
「えへへ〜」
翔子は巨大な熊のヌイグルミに抱き付きながら、俺を出迎える。
勉強机や本棚。白い肌触りの良さそうなカーペット。全体的には割とまともな部屋になっている。
んだけどなぁ……
「この、あちこちに散りばめられているヌイグルミは、どういった意図で?」
「うーん。隠れみっきー的な」
「あー。うん。わかったわかった」
いまだ二、三箱残っている段ボールがの中身が怖いが、俺はそっと部屋の扉を閉めた。
「亮平〜。おわらなーい」
「いや、おまえこれはダメでしょ」
部屋の床が見えないくらいに広げられた、様々な衣類の中心で、里香は情けない声を上げていた。
俺は何も見なかった事にして部屋を出た。
そんなこんなで、片付けに時間が掛かりそうな二人は頼りにならない為、今日のご飯は俺が用意しようと思う。
スマホで周辺の地図を表示させながら、俺は近所をぶらつく。
昨日行ったコンビニに始まり、近隣には小さいながらも食料品買うのには困らなさそうなお店があった。
また、今後通う高校も、然程苦にはならない距離にある為、日々の生活には困らなさそう。
そんな訳で、買い物をして帰ると、二人の笑い声が聞こえて来る。開いたドアから部屋を覗くと当人達はおらず、部屋は未だに片付いたとは言い難い惨状。
リビングを覗くと、案の定テレビを見ながら休憩モード。
「おーい。片付け終わったのかー?」
「「おわらなーい」」
「お前らやる気あんのか!?」
ムリムリイヤイヤと、駄々をこねる二人を説得しながら何とか続きを促して、簡単ではあるが夜ご飯の準備を進める。
途中翔子の布団が届き、今日からは各自部屋で寝る様に伝えると、そこでまた一悶着。
何とか落ち着いた頃にはもう夜も遅くなり始めていた。
「な、なんか疲れた……」
「ごめんね。明日からはちゃんとするからさ」
「家事もちゃんとやるね。今日は亮君に任せちゃったから」
リビングの机に突っ伏しながらため息混じりに呟く俺に、里香は苦笑い気味に、翔子は多少申し訳なさそうに、労いの声をかけてくる。
因みに部屋の片付けは結局終わらず、最低限の片付けのみを終わらせた。
「いや、まぁいいよ。明日からはついに学校だし」
そう。明日から遂に高校生としての学生生活が始まる。
色々と不安な事もあるが、まぁこの二人は平気だろう。
こいつらは色々と立ち回りが上手いからな。
「学校かー。皆同じクラスだったら面白いよね」
「それだったら心強いなぁ〜」
里香と翔子が学校生活に想いを馳せる中。
俺は一つ決めていた事を提案する。
「なぁ。クラスがどうなるかとかは分からないけどさ」
一息入れて。
「暫く俺達、他人のフリしないか?」
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