忙しい日曜日
「ふぅ。ひとまず休憩するか」
散らかした小物類を整理し、各家具の上部を簡単に掃除すると、俺は額に滲んだ汗を拭う。
四月半ばの気候は、決して暑いと感じる程の気温ではないけれど、こうして体を動かしていると、流石に汗ばむ。
俺は火照った体を冷まそうと、冷たいフローリング部分に寝転がり、一息いれる。
まだ終わりまでの目途は経っていないけれど、進行は順調と言ってもいいだろう。
夢中で作業していた為、あまり時間を気にしていなかったが、時計を見てみれば、まだ三十分程しか経過していなかったようで。
「結構効率よく進められてるな」
自分の出来に満足していたのだが。
そこでふと、掃除下手な二人の姿が見当たらない事に気が付く。
彼女等が下手に色々な所に手を出せば、その後始末に余計に手を焼く事になるであろう事は想像に難くない。
ってか何時から居なくなったのかすら気が付かなかったとは……どれだけ掃除に本気になってたんだ……。
何の当ても無いが、どうせ自室にでも籠っているのだろうと推測し、廊下へと足を向けた。
部屋に行くついでに、トイレや俺の部屋の様子を見てみるが、特に誰かいる様子は見受けられず。
「おーい、二人とも居るか? ドア開けるぞー」
一応一声かけ、俺はまず翔子の部屋を覗き見て――。
そっとドアを閉めた。
大分メルヘンな部屋になっていた。なんていうか、掃除云々以前の問題だった。
いつの間にか完成していたヌイグルミ王国を見て見ぬ振りをして、俺は続いて里香の部屋へと続くドアをそっと開ける。
あーうん。普通に汚い。
辛うじて足の踏み場があるかどうか、と言ったところか。
それでも踏み場があるのだから、里香からすれば片付いている方なのかもしれない。
…………二人とも実家を離れて注意される人がいなくなったからか、大分好き放題している様で。
これは暫くお部屋チェックをしていかなけばいけなそうだ。
場合に寄っては二人の親御さんに代わり、俺がしっかりと注意をしていかなければ。
「って結局二人はどこ行ったんだ?」
予想が外れ、戸惑う俺は取り合えず再度リビングへと戻る。
流石に出かけたのであれば一声かけてくれるだろうから、家に居るのは間違えないと思うのだが。
さほど広くないこの家で、他に見ていない所といえば、洗濯機などが置かれている洗面所くらいだろうか。
先ほど洗濯したばかりだし、用など無いのではないかと思うのだが。
そんな自問自答を繰り返しながら、俺はリビングから続くドアを開ける。
この時俺は一つミスを犯した。
即ち、一声かけるとか、ノックをするとか。
そういった確認を怠ったのだ。
それが齎す結果など、古今東西碌な物が無い訳で。
「「…………え?」」
「…………は?」
ドアを開けた先。
俺の目に飛び込んできたのは、二人の少女の肌色とモノクロ調とした布地とピンク色にリボンのついた布地で。
その布地は、先ほど誤って俺が干してしまった物と形状がよく似ており。
有体に言えば下着な訳で。
「えっと、これからお風呂?」
動揺した俺は、特にドアを閉める訳でも、目を逸らす訳でもなく。
普通に話かけてしまった。
「い、いや、お風呂場の掃除をしてたんだけど、洋服が濡れちゃって」
恐らく返答をした里香も、大分動揺していたのだろう。
顔を朱に染めながらも、俺の問いに普通に答えてきており。
確かに足元も見てみれば、先ほどまで来ていた様な気がする衣類が転がっており。
ふと、里香の隣で立ち竦んでいる翔子の様子を見てみれば、顔色こそ変わっていないものの、視線はブレブレに揺れ動き。
数瞬早く、正気を取り戻した俺は、数度無言で頷くと、素早くドアを閉めて、背を向ける。
その後、ドアの向こうから悲鳴響き渡り。
あぁ。これはまた怒られるなと、俺は確信するのだった。
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作者より
いつも拝読して頂きありがとうございます!
突然ではありますが、現状毎日投稿を出来るだけ維持して本作を進めて参りましたが、クオリティー向上の為、投稿頻度を落としたいと思っております。
今後より一層皆様に楽しんで頂けるよう試行錯誤をしていきたいと考えていますので、ご理解のほどよろしくお願い致します。
大変申し訳ありません。
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