体力測定!
「やっぱりめんどくさいよな」
「あぁ。めんどいな」
木戸と二人でグラウンドに並び立ち、空を見上げながら黄昏る。
雲ひとつない青空。
多少肌寒さは感じるものの、気持ちの良い風も吹いており、体を動かすにはちょうど良いだろう。
時刻は授業的にはちょうど二限目が始まる所だ。
昨日の連絡通り、登校後ホームルームが終わると、体力測定の為、一年生は二クラスずつ順番に更衣室で着替えをした。
測定競技は幾つかあるが、主に体育館で行われるモノと、グラウンドで行われるモノ。
一学年全体となると流石に混雑する為、先ずは男女で別れ、男子は外で。女子は体育館となった。
グラウンドの競技は、測定するのに広さが必要な走る系や投げる系など。体育館は省スペースで出来る、握力測定や、腹筋などである。
その為この場にいるのは男のみ。
女子にカッコいい所を見せたかった奴らは途端にやる気を無くしている。
まぁ俺達は動くのがダルイだけなんだが。
「「めんどいなぁ」」
「二人も、まだそんなこと言ってるの……」
後ろからの声に振り向くと、呆れ顔で俺達を見ている楓の姿。
ブカブカなジャージを身に纏う姿は、初々しさを感じ。袖の所なんてブカブカ過ぎて、小さな子がやるお化けの真似みたいになってるし。
「楓。そんな服装だと怪我するぞ。ちゃんと折っておけ」
自分の着ているジャージの袖を指差しながら、指摘をすると、楓はパチクリと数度瞬きをし、いそいそと袖をまくる。その顔は若干赤い。
「ごほん! ちゃんとやる気出して! 適当やってると怪我しちゃうよ!」
可愛いなぁ楓は。俺達に指摘する前に、自分が指摘されちゃって照れてる姿は格別だなぁ。
男の子なのが実に惜しい。
そんな馬鹿な考えをしながら雑談をしていると、どうやら我がクラスの最初に測定する競技が決まったのか、先生がやってくると案内を始める。
生徒の人数が人数なので、どう割り振りをして動かすか、教師陣も忙しいらしい。出来れば先に決めておいて欲しかったが。
説明によると、まずは五〇メートル走。そこからは用紙に書いてある項目を上から順番にやっていく様に、との事。
基本は各クラスでペアを作り、相方の記録を付けていくスタイル。何かあれば見回りをしている教師に報告。といった具合だ。
ペアを作れと言われた際、木戸と楓が組んだら、俺は誰と組もうか、とか考えたが。どうやら三人ペアでも良いらしく、折角ならと、三人でペアを組んだ。
「さて、トップバッターは誰がいく?」
「そりゃ、出席番号順だろ?」
「異議なーし!」
俺の問いに、ニヤつきながら木戸が提案し、楓が乗っかる。
出席番号だと……
「……俺って事ね」
「そゆこと」
「頑張ってね!」
木戸に背中を押されながら、俺はスタートラインへ向かう。
全部で五レーンあるが、最初のスタートをやりたがる人は中々いないのか、俺以外の四人が決まるのに暫し時間がかかった。
「おーし、揃ったな。スタートは不正がない様に先生が見るぞ! 測定係の人! ちゃんと、タイム見るように!」
教師の一人がスタートライン側に立つと、腕を前に突き出し、構える。
「位置について、よーい、ドン!」
ドンと言いながら突き出していた腕を高らかに真上へ上げ、スタートが言い渡されると。
俺達は一斉に地面を、蹴り出す。
風の抵抗を感じながらも、出来るだけ意識的に手足を振り、リズムを徐々に上げていく。
走り出してしまうと、意外と五〇メートルとは短いもので、直ぐにゴールのラインを通過。
走っている最中、前を走る背中は見えなかった。
他の人はどんなものかと振り向くと、数瞬遅れてゴールをしているのが目に入る。
「おー! 良いタイム」
木戸がストップウォッチを手にしながら呟くと、隣で呆然としていた楓が我に帰った様子で、その手を覗き込んだ。
「うわ!六秒三……」
おぉ。少しタイムが伸びたかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます