体力測定!!
グラウンドでの計測を終えた俺達は、女子と入れ替わるように体育館へと移動をした。
五十メートル走の後は、ハンドボール投げや立ち幅跳びなと、比較的に疲れる要素があまり無い競技が続き、和やかに測定が進んだ。
因み宣言通り、楓の結果は余りよろしくは無かったが、それでも本人にとっては十分な結果だったらしく、嬉しそうにしていた。
一方、木戸はというと。
「二人とも凄いよね! 五十メートル走も凄い早かったし、他の競技でもクラス内では敵なしだったよ!」
そう。木戸も俺に負けず劣らず……どころか五十メートル走では辛うじて勝てたが、他の競技では向こうの方が良い結果を出していた。
地味に悔しい。
「次は、握力測定だよね。やっぱり自信無いなぁ」
「楓の腕、女子みたいに細いからな。力入らなさそう」
「掌もちっちゃいし、ちゃんと計測機握れるか?」
不安そうな楓を木戸と俺が冗談でからかうと、彼はその小さな掌を俺達に向けて、ぐっぱーぐっぱー。
「大丈夫! ちゃんと機械の握る幅変えるから!」
「たしかに! それなら大丈夫だわ!」
楓の返しに木戸がおかしそうに笑う。
実際小枝の様に細い楓の指は、同じ男としては不安になるレベルではある。
腕も細く本当に女子の様で。木戸の冗談も的を射ている。
これ、マジで里香や翔子と変わらないんじゃないか?
などと考えていると、視界の隅で見知った顔を見かける。
何か用事があったのだろうか。そこには教師と話をしている翔子の姿が見て取れた。
数度言葉を交わすと、そそくさとその場を離れて行く。
その表情は、少し深刻そうな顔をしておりーー
「悪い。ちょっとトイレ行ってくるわ」
「ん、了解。余り遅くならない様にね」
「いってら〜」
気になった俺はトイレに行くフリをして、翔子の後を急いで追った。
体育館を出ると、翔子は通路を通り、校舎の方へと向かう後ろ姿を見つける。
俺は駆け足で追うと、一瞬声をかける事に躊躇しつつも、結局はその背中に声をかけた。
「あー……翔子。なんかあったのか?」
出だしでどもってしまい、ぶっきら棒な感じに声をかけてしまったが、かけられた当の本人である翔子は、それよりも俺が声をかけてきたのが意外だったのか、驚いた様子で振り返る。
「亮君……どうしたの?」
「いや、教師と話してたから、なんかあったのかなって」
俺が顔を逸らしながら話すと、翔子はクスクスと笑いながら。
「なーに? 心配してくれたの?」
小首を傾げつつ上目遣いで聞いてくる。
「そりゃ、な。お前達に何かあったら、約束どころの話じゃないし」
その気持ちに嘘はない。
約束の手前、照れ臭さはあるが、二人に何かあれば何があっても助ける。その覚悟はある。
まぁ最も、この翔子の反応は、それ程大事では無いのだろうが。
そんな俺の言葉に、今度は翔子が目をそらす。
「ふ、ふーん。そっか」
「おう」
言ってからだいぶ恥ずかしい事を口走った事に気が付いたが、それはもう横に置いておく。
それよりも……
「で、結局何があったんだ?」
その言葉に明後日の方向を向いていた翔子も、はっと我に返ったのが、小さく「あっ」と声を漏らし。
「里香ちゃんが怪我しちゃって……」
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