休日

 その日の朝は、まるで金縛りにあったかのように、身動きの取れない状態から始まった。

 寝返りを打とうとしても、体が思うように動かず、腕や胸回りに圧迫感を感じる。

 何だか少し前にも同じような事があったような……寝ぼけた頭で、半分夢の中にいる様に微睡む思考。

 重い瞼を無理やり持ち上げ、次第にクリアにある視界の中に。

 案の定と言うべきか、想像通りの光景がそこには広がっていた。


「おい、里香に翔子。お前らいつの間に布団に潜り込んだ……」

「…………」

「んっ……もうちょっと……」


 里香は完全に熟睡中なのか声をかけても、掴まれている腕を無理やり動かして揺すっても沈黙。

 それに比べ翔子は。


「いや、翔子。お前は起きているだろ」

「むにゃむにゃ」

「……リアルにそんな寝言を言う人はいないから」

「すぴー。すぴー」

「ほう。このまま寝たフリを続けると……」


 いくら声をかけても起き上がる気を見せない翔子に、俺の悪戯心が刺激され。


「起きたら負けな」

 俺は翔子の耳元で小さく囁くと、そのまま吐息を彼女の耳に吹きかける。

 

「ひゃぁぁあああっ!」

 素早く俺から離れると、面白いくらいに飛び上がり、息を吹きかけられた耳を手で押さえて、顔を赤くして俺の方を涙目で睨む。


「ちょっと! さすがにそれは反則でしょ!」

「いやいや。あざとい寝言を言っていた翔子が悪いな」

「なんでよ! たまには良いでしょ? あんな感じも!」

 それについては不本意だが同意。だけで本人の前で認める訳にもいかないので。


「ダメです。今のが罰なので悪しからず」

「ぶーぶー! 横暴だ!」

 朝からテンション高めのやり取りに、寝起きとは思えない程に頭が覚醒している。

 これは顔を洗うより目覚まし効果があるかもしれない。

 そんな馬鹿な事を考えていると。

 

『つんつん』

 

 俺のわき腹を突く指先。

 その指が誰の手なのかは一目瞭然で。


「朝から煩いんだけど」

 顔を歪め文句を言う里香とバッチリと目が合い。

「おう。おはよう」

「おはよー……じゃなくて! う る さ い の!!」

「それは悪かった、って謝りたい所だけど。それならお前は俺の布団に侵入して、剰え二度寝をするな」

「違う! 寝る気なんてなかったの! でも翔子に誘われて一緒に布団に入って、亮平をギュッてしてたら、なんか眠くなっちゃって」

「いや、それは理由になってないから」

 ってか主犯は翔子かよ!

 

 俺は反射的に翔子の方へ顔を向けると。

 里香の方に気を取られている隙に、いつの間にか先ほどまでいた布団の上からいなくなっていて。


「それじゃー、お二人さん。早く顔を洗って来てね。朝ごはん作ってるから」

 俺の部屋からは既に出ていて、廊下から後ろ手を振りながら、リビングの方へ曲がって行く姿。


「なんだよ。逃げやがって……」

「ふふっ。朝から二人共元気だね」

 口元に手を添えながら可笑しそうに笑う里香に。

「里香。お前はもう少し慎みを持て。翔子はちゃんと起きてたぞ」

 俺に襲われたらどうするんだ?

 指をワシャワシャさせて、脅すように尋ねると。


「その時はその時かな? 大切にしてね?」


 起き上がりながらウィンクをして、里香も翔子に続き部屋を出ていく。

 後に残った俺は、悶々とした気持ちの中、顔を洗う為に起き上がる。


 朝からだいぶテンションを上げて疲れてしまったが、俺達がこちらに引っ越してきてから、調度一週間がたった土曜日。

 よし! 有意義にこの土日を過ごすぞ!


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作者より

 いつも拝読して頂きありがとうございます!

 いつの間にやらこの小説を投稿し始めて一カ月経っていました!

 月日が経つのは早いものですね……

 と、言うわけで新作上げました! 

 前に近況ノートで言っていた新作とは違うものですが……つい書きたくなっちゃいました!

 新作ですが、ジャンルはラブコメ! 内容としては王国のお姫様とその護衛騎士のお話です。

 現状は姫様とのラブラブ日常(たまにシリアス有)みたいな感じに考えておりますので、是非そちらも読んで頂けたら幸いです!

(たぶんこっち以上にイチャイチャしてます)

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