疲れ


 ホームルームが終わると、クラスの雰囲気が弛緩するのが分かった。

 久々の学校という拘束に、初日こそ午前中で終わったものの、今日は午前中もしっかり授業をして、尚且つプラス午後に二時限分の授業をしたのと同じ時間が経過していた。


 更に追加するならまだ春先の肌寒い中、体育館の冷たい床に座りながらの時間である。

 精神的にもだが、体力的に……よりは身体の疲労感、とでも言うべきか。

 とにかく、特別何かした訳でもないのに、身体が疲れを訴えかけてくる。

 

「なんか、疲れたな」

「あぁ。ほんとに」


 隣に座る木戸も、ぐでぇーと、椅子の背もたれに体を預ける様に弛んでいた。

 俺もつられて、顎を机の上に乗せて、突っ伏しながら怠けていると。


「なんで、二人ともそんなにダラけてるんだよ……」


 横から声をかけてきたのは、美少女――ならぬ美少年の楓。


「楓〜。一緒に怠けよう。この体調で帰宅するのは危険だ」

 木戸が頭だけ楓の方を向きつつ、俺達の仲間に加えようと、楓を誘惑していると。


「いや、二人ともそんなんじゃ明日の体力測定で死んじゃうよ?」


 そう。帰りのホームルームで先生が告げた明日の予定。体力測定。

 午前中をフルに使って、男女共に体育館と校庭を使って行われる予定になっている。


「最悪だ……」

「なーにいってんだよ。瞬くんは運動神経良いじゃん」

 羨ましいなぁ。と楓が言うと、嘆いていた木戸が苦笑しながら。

「いや、疲れるじゃん」

「わかる」

 思わず俺も同意してしまった。

 間髪入れずに俺も同意したものだから、楓がふざけて頬を膨らませご立腹アピール。可愛い。


「もう! ち、ちなみに亮平くんは運動得意なの?」

「運動か……スポーツは余りやらないけど、体を動かすのは得意な方だと思うぞ」


 楓の質問に、俺は実家の方での出来事を思い出す。

 田舎の子供はゲームを買ってもらえないと、自然の中で遊ぶしかないからな。

 ウチは余りゲームを買ってもらえなかったから、良く外で遊んでいた。里香や翔子と。  

 

 ふと横を見ると、俺と木戸の間で立っていた楓が、羨ましそうに俺達の事を見ている。


「いいなぁ二人とも。瞬くんは知ってたけど、亮平くんも見た感じ結構いい身体してるもんね……肩幅とか広いし」

 ムニムニと。俺の腕や肩を触ってくる楓に、何とも言えない気持ちで、されるがままに触らせる。


「楓は、うん。ほっそりしてるもんな。運動は苦手か?」

 何とか言葉を探してみたけど、上手い言い回しが思い浮かばない。

 

「うん。スポーツとかは好きなんだけどね。結果が全然伴わなくて」

 しゅん、と落ち込む楓に、木戸が頭をゴシゴシと撫で。


「ま、明日は明日の風が吹くさ! そろそろ帰ろうぜ!」


 教室を見渡すと、既に残っている生徒は数名程度。

 どうやら皆んな早々と帰宅の路に着いたようだった。


「そうだな。俺も帰って飯作らないとだし」

「ふーん。亮平くんは家事するんだ?」

「いや、俺親元離れてるからさ」

「あ、一人暮らししてるんだ! すごいなぁ!」

 楓の笑顔が眩しい。二重の意味で。

 可愛らしい笑顔。純粋無垢な表情に、多少の罪悪感をおぼえながら。


 うん。嘘はついてない。ついてないよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 作者より。

 いつも拝読して頂き有難う御座います。

 書きたい事は沢山あるのに、上手く文章に出来ず歯痒い思いをしています……

 最近は皆様のお陰で、読んで下さる方も増え、とても嬉しく思っています。

 色々と不出来な所も多いかとは思いますが、懲りずに読んで頂ければと……

 宜しくお願いします!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る