反省会!
「ごめんなさい……」
床の上、姿勢を正して正座する俺の前に、仁王立ちで睨みを効かせる里香と、同じく仁王立ちで瞳の色を無くした翔子が、正面から見下ろす。
「なーにが先輩ともっと話がしたいよっ!」
「亮君、悪い子はダメだよ?」
家に帰って来てから彼此十分近く、俺はこの姿勢のまま、二人から怒りのお説教を受けていた。
目線の高さから、どうしても彼女らの太腿がチラリと視界に入ってきていて、全く話に集中出来てはいないのだが、どうやら俺の『先輩と話をしたい』発言が『先輩と仲良くなりたい』と解釈をされてしまったようで、二人はご立腹の様だ。
正直色々と反論したい所もあるが、そもそもの先輩と明日話をする理由が『先輩ともっと話したい』って所からして嘘な為、これ以上あれこれと言っても話がややこしくなってしまうだろう。
詰まる所、本当の理由を話すしかこの状況を打開する術がない訳だが。
今更『二人の評判を下げない為』にと言った所で、信じてもらえるかどうか……悩みどころだ。
結局最後まで抵抗しようと思っていたが、俺の脚が痺れてしまい、解決を急ぐため本当の事を話して。信じてもらう為に、その後更に十分正座が続き、それでもまだ憤る二人に晩御飯を作って食べ終えるまで許してはもらえませんでした。
お風呂から上がり、先に入っていた里香と翔子もリラックスムードでリビングで寛ぐ中。
俺も床に転がっていたクッションを幾つか手に取ると、それを敷布団の様に束ね、横になる。
俺が着心地の良いスウェットパジャマを着ているのに対して、二人は相も変わらず動物パジャマ。今回里香はブタさん、翔子はパンダモチーフの柄を着ており。
このパジャマシリーズ一体何種類あるんですかねぇ。ってか何着もってるんだ……。
そんなパジャマ姿に疑問を抱いている中で、ふと考えてみれば三人で暮らし初めてまだ一週間と経っていない事に気が付く。元々実家にいた頃もこんな風にダラダラと一緒にいた為、今更新鮮味も余り感じられず、いい意味でのんびりとした時間が流れていた為、あまり気にしていなかったが。
「お、枕がきた!」
「里香……お前人の足を枕にするなよ」
「いいじゃん。高さが調度良いんだよね」
「いや、足痺れちゃうから」
うーん。里香はのんびりし過ぎな気もするが、どうなのだろう。普通なのかな?
そんな里香とは違い、翔子は姿勢よくクッションの上に座り、大人しくテレビを見ていて。
俺は足元にいるお荷物をどうにか出来ないか、翔子の顔を見ながら考えを巡らせ、ふと名案を思い付く。
「翔子さん。お膝を貸して頂けませんか?」
「んー? 膝枕してほしいの?」
「いや、里香の枕になってあげてほしいな、と」
「あぁ。じゃぁダメ」
「え? ヒドッ!?」
やはり、お荷物はどこも引き受けてくれないか。
仕方が無いので、取りあえず俺が膝枕をしてもらい、平等性を量る事にした。
いや、枕にされるだけって嫌じゃん? まぁこの場合翔子は一方的にするだけになってしまっているけど。何だか嬉しそうなので良いのだろう。
足元で「ずるいずるい」と抗議をしているブタがいるが、無視を決め込み、そのまましばらくテレビを見ながら時間を過ごす。
「ねぇ。そういえば明日、園原先輩とはどう話すつもりなの?」
「どうって、普通に断るつもりだよ。もちろん丁寧にね」
どれくらいの時間が経っただろうか。足元からの唐突に尋ねられた質問に、俺はちょっと嫌味っぽく返答する。
「うぅ……そりゃ、ちょっとイラッとして乱暴な感じになっちゃったけど……でも大丈夫? 一人で話に行くんでしょ?」
そう。夜ご飯の最中に話をしたが、明日の先輩との話し合いでは俺一人で臨む事にした。
今日の時点で、里香や翔子の記事は書けなくてもいいとの事だったので、これ以上二人が目立つことが無いように最初から同席をさせない事にしたのだ。
「亮君。話の雲行きが怪しくなったら取りあえず逃げてきてね。その時は、私も参加するから」
頭上で悪い顔をする翔子を見て、できるだけ頼らない様にしようと心に誓う。
……フラグじゃないよ?
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