二人の反応

 真っ直ぐ家に帰るのがなんと無く嫌で、俺は帰り道にスーパーに寄る事にした。

 まだ家事分担については二人と話していないが、やっておく分には問題は無いだろう。

 流石にメニューを独断で決めるのも気が引けたので、スマホのアプリを使いグループメッセージを送る。


『買い物するけど、夜ご飯何がいい?』


 メッセージを打ち込み送信すると、直ぐに既読が二件付き、返答が返ってきた。


『私達も合流する』


 里香からの飾り気ない返答。既読が早かった事も驚きだが、その文面に些か動揺する。


って。もう二人は一緒に居るのか」


 ボソリと呟く俺の言葉に、当然返答など無い訳で。

 だが、何処で買い物するのか分かるのか? 分かるか。近くにスーパーあるの教えたし。

 

 二人は……学校では他人の振りをすると約束はしたが、下校中はもうノーカウントって認識なのだろう。

 本来なら、だいぶグレーな気がするが、その辺りのタイミングまで細かく決めていなかったから、こればかりは後の祭りか。

 ここでダメって言ったら、絶対怒られる。

 少なくとも俺にはこ二人の反応が恐くて言う気にもならず、色々打ち込んでは消してを繰り返して。

 結局は『了解』の二文字を送信した。



 スーパーの前で待っていると、あまり待つ事なく、二人は揃ってやって来た。


「おまたせ」

「あ、あはは……ごめんね。待ってもらっちゃって」


 里香は、うん。まだ不機嫌だな。

 翔子は、多分本人どうこうより、里香と俺の仲を取り持つ方向にシフトしてくれているのだろう。

 里香は昨日からこんな調子で、ずっと『そんなの必要ない』とか『私達なら大丈夫』と否定的だった。

 翔子は俺を探るように無言で見つめてきていたし、恐らく不服ではあるのだろう。

 それでも喧嘩にならない様に、バランスを保ってくれていた。

 ほんと、申し訳ない。


 実際、俺もなんだか遠回りをしている様な。本当に必要だったのかと、思わなくも無い。

 でも、これはチャンスなのだ。二人にとっても。俺にとっても。

 だから俺はそう信じて、このルールを守っていこうと思う。

 少なくとも、二人が我慢してくれている内は。


 

 

 買い物は何事も無く終わった。

 途中から、そういえばこの現場を同じ学校の人に見られたら、ヤバくないか? と気付いてしまい、買い物どころでは無かったが。

 少なくとも同じ学校の制服を着ている人は見受けられなかった。


 家に着いて一息つくと、俺の正面に里香が座り、その隣に翔子が座る。

 おや、何やら雲行きが怪しいぞ。


「で。私達を捨ての学校初日はどうでしたか?」

「お、おい。人聞きが悪いな。別にそういう意味じゃーー」

「じゃー、学校でも普通に会お?」

「……それはだめ」


 里香のムッとした顔は、若干涙目。

 翔子はそんなやり取りをみて、苦笑い。


「でも、実際どうだったの亮君の方は?」

「うん。気の合いそうなのはいたかな」

「そっか。よかった〜。私達はクラス隣だったから何となく状況が分かってたからさ」

 里香が一組。翔子が二組と、俺達三人は見事にクラスがバらけいた。

「里香、さっそくクラスの子達に囲まれてたもんね」

「それなら翔子だって、色んな人から話しかけられてたの見たよ」 

 どうやら二人とも上手い事初日を乗り越えたようだ。

 よかった。と、一安心していると。

 

「「でも」」

 二人して、俺を見て、訴えかける様に。


「亮平にいて欲しい」

「亮君と一緒にいたいな」


 悲しげな里香と、儚げに笑う翔子。

 あぁ。このルール……もう守れないかもな。

 

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