引越し準備!

 新居に着いてかれこれ三時間ほどが、経過しただろうか。

 その間に引越し業者やら、ガス水道といったインフラの点検やらと人の行き来も激しく、対応に追われた。

 なお、大人達は運転で疲れた為、着いて早々にダウン。部屋の隅で丸くなっていた。その後荷物の整理、リビング部分の家具の配置等。忙しなく動いていると時間はあっという間に過ぎていた。

 

 気がつくと先程までは明るかった外の景色も、今は夕日に照らされ、赤く染まっている。

「それじゃー、私達はそろそろ帰るわね」

 母さんの言葉に、里香の両親も同意をし帰宅の準備を始める。

 慌ただしい一日だった。でも一番大変なのは母さん達だろう。

 何せこの時間から三時間かけて帰るのだから。

「なんだよ。泊まってかないの?」

 俺の問いかけに母さんがニヤッと笑い。

「やめとくわ。せっかくの愛の巣なんだから」

「んなっ!?」

 心配する息子に対し、茶化してくるこの母親。育て方間違えたんじゃないか爺ちゃん……


「まぁ今日は金曜日。明日何もなければそれもアリかもしれないけどね」

「俺も坊主の父ちゃんも仕事だからな!」

 筋肉むきむきマッチョマンのおじさん、もとい里香のお父さんは、いつの間にか俺の横に来ると肩に手を回して顔を近づけてくる。

 相変わらずむさ苦しいおっさんだ。

「おじさん、うざい」

「酷い! 里香にも余り言われた事ないのに!」

「……いや、お父さん普通にウザいから」

「グフっ!?」


 ぐったりと倒れ伏すおじさんが出来上がる。

 俺はああはなるまい。


「それじゃー三人ともちゃんと仲良く、はするだろうから余りはしゃぎ過ぎないのよ〜」

「言われなくても大丈夫だよ。いいからそっちも気をつけて帰りなよ」

 玄関先、母さんの抱擁を受けながら、俺達は親を見送る。

 里香の母さんは終始ニコニコしており、今も里香や翔子と楽しそうに会話をしていた。


「なあ坊主」

 酷く真剣な声色で、おじさんが話しかけてくる。

 さっきまで床に転がってシクシクしていた人と同じ人物とは思えない、すごい変わり身の早さだ。


「……なんですか」

「里香と翔子ちゃんをよろしくな。お前なら任せられる。ただ、お前もついこないだまで中坊だったんだ。いざとなったら大人を頼れよ」

 

 数刻前のような事が度々無ければ、この人のことを尊敬出来るんだけどな。まあもしかしたらそれも狙っての事なのかも知れないが。


「ありがとうございます。その時は相談します」

「おう! お前には父ちゃんも母ちゃんも3人ずついる様なもんなんだからな! 遠慮せず連絡してこい」


 この人、ほんと時々カッコいいんだけどなあ。残念だ。

 

 そんなやり取りののち、大人達は帰っていった。

 最後の最後で『じゃー私達も』とかいって里香達も帰るのではとも考えてたが、どうやらそういう訳でも無かった様だ。


 なお、今日からお世話になるこの物件ーー6階建のマンション。その6階角部屋。601号室には、何故か俺の苗字である、

『飯島』が記されていた。

  それを見て二人が『これじゃー飯島里香と飯島翔子になっちゃうね〜』と騒いでいた。

 どうやら女の子二人でも、姦しいは出来るらしい。

 いや、知ってたけど。


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 前回も書かせて頂きましたが、異世界ファンタジーモノも書かせてもらってます。よろしければ一緒に読んでいって下さい!

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