罪と罰
親達が帰った後。少し外をぶらついた後、姦しく騒ぐ二人をリビングに連れ、テーブルの前に座らせる。
現在このリビングには、シンプルなデザインの黒いカーペットを敷き、その上に背の低いテーブルを配置。座布団代わりに使おうと実家にあった適当なクッションを幾つか拝借して置いてある。
里香と翔子はそれぞれがいつも使っているクッションを手に取り仲良く横に並んで座った。その対面に俺が腰を下ろす。
まあウチに遊びに来た時にいつも同じクッションを使っていたからな。半ば彼女達専用といっても過言ではない。
さて、そんなクッションの事よりも。
「で、なんでこんな事に?」
俺は二つの意味でこの問いをした。
何で同じ高校を受験しているのか、
違う物件に住む選択肢は無かったのか、と。
「そりゃねぇ」
「一人で行こうとするから」
「「ねー」」
「おまえら……」
つまりは有罪。同じ高校に通うってのは単純に一緒にいたいから、なのだろう。
そして、同じ物件って所が、黙って離れようとした罪に対する罰。
そりゃー、黙って実家を離れようとしたのは、俺が悪い。
二人と離れるという選択肢を取ったのもの、その事について相談しなかった事も。俺が悪い。
だから、ある意味、この程度で許して貰えるのなら、いいのだろう。むしろご褒美まである。
でも言い訳をさせて欲しい。別に俺だって、離れたくて引越しを選んだ訳では無いのだ。この二人と……自分の将来の為。
どうしてもやりたい事があった。その為の選択肢として、あの田舎では難しかった。
でもなあ、それ言ったらコイツら絶対調子に乗るもんな。
さらに言えば、その意見すら受け入れてもらえない可能性もあるし……
そんなこんなで反論する事なく受け入れるしか無いのだろう……
だが、それでも。
「せめて、寝る場所は別々にしませんか?」
「「だめ」」
この物件は3LDKの、ファミリー向けの物件になっている。
ちなみに今回の物件は、ウチの両親が俺の意見を聞かずにいつの間にか準備をしていた。
曰く、金出してあげるんだから文句をいうな。
全くもってその通りなので、狭くても我慢しようと思っていたが、まさかこんな事になっているとは。
「いや、部屋いっぱいあるんだから、それぞれ別々に部屋確保できるだろう……」
「ダメだよ〜」
「また目を離した隙に、引っ越されちゃたまらないからね!」
俺の意見に、翔子が上目遣いで首を振り、里香がニヤニヤと嫌味たらしく、言ってくる。
多分これ、暫く俺の立場弱いんだろうなぁ。
「わかったわかった。取り敢えず今日の所は、な」
「「えー。今日だけ?」」
こいつらの貞操観念一体どうなっとる。
「はぁ、疲れた。さっさとご飯食べて風呂入って寝るぞ」
親を見送った際、近くにあったコンビニで本日の食料は確保済みだ。
机の上に置いていた袋から、いそいそとおにぎり等を取り出していると。
「ねぇ? 今日お風呂一緒に入る?」
里香がいつの間にか俺の横に座り、俺にそっとささやく。
俺は何を言われているか分からず、頭が真っ白になった。
誰かたすけてください。
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