第三十二話 災い転じて災いを成せ
翌日。
シュルーナ軍のデモンブレッドの面々は本陣に集まっていた。
「アホなのであります。ミゲルくんもアホでありますが、姫様もアホです。それを止めなかったリオン殿もアホであります。ついでにヒュレイ殿もアホであります」
ミゲルのことを知らされていなかった。というか、あとから聞いたチャコが、開口一番不満を並び立てる。
「失敗したらどうなるか、わかっていたはずでありますぅ」
ぷくぅと頬を含ませるチャコ。
「良かれと思って行かせたのじゃ」
「それで捕まってれば世話ないであります」
そんなわけで、ミゲル投獄の知らせがシュルーナのもとへと届いた。使者が囚われるのは珍しくない。実を言えば、こうなることもシュルーナの予想のひとつにあった。ゆえに、問題はこのあとだ。
――リーデンヘルがどう動くか。
少なからず、連中は降伏も視野に入れている。そうでなければ、とっくにミゲルは殺されているはずだからだ。
「で、どうするんだ。リーデンヘルのアバズレからは、こんな書状まで届いてるんだぜ」
要求は、シュルーナとの一対一の対決。応じなければ、
「応じる気はない。フロラインとて、
ミゲルはシュルーナのお気に入りだが、フロラインからしたらただの使者である。戦況をひっくり返すような取引に使えるとは思っていまい。
「いかがなさいますか? これ以上リーデンヘルに時間をかけるのは厳しいかと」
「わかっておる。とりあえず、一騎打ちに応じる気はない。再度書状を送る。その返事次第で方針を決める。もちろん、長引かせる気はない」
チャコがテーブルにバン! と、掌を叩きつけた。
「何を言っているでありますか! ミゲルくんを使者として送り込んだのはあんたらでありましょうが! とっとと救出にいくであります! 今晩、闇夜に乗じて、人間をさらうであります。こちらも人質をとるであります! リオン殿も、ストレス発散してくるであります。ヒュレイ殿もです!」
「夜襲なんてしたら、ミゲルが危なくねえか?」
「はん!」と、尊大に笑うチャコ様。
「ミゲルくんを殺したら最後、完膚なきまでに滅ぼされることぐらいリーデンヘルは承知。安易な真似はしないであります!」
「……おぬし、なかなか頭が回るのう」
熱くなっているだけだと思うが、感心してしまうシュルーナ。
その時だった。扉がバンと開いた。現れたのは、リオン配下のジュラフェリスだった。
「ガウガウウウウウッ!」
「どうした、ジュラフェリス」
「ガウ、ガウガウッ、グァアアァァァオッ!」
ひたすら、吠え続ける二足歩行のドラゴンゾンビ。リオンはコクコクと頷いていた。
「リオンよ、なんて言っておるのじゃ?」
「全ッ然わかんねえ」
「じゃろうな!」
☆
本陣のテントから飛び出し、ジュラフェリスについていくシュルーナたち。向かった先は、本陣の北側。
すると、そこには忌まわしきマーロックの姿があった――。
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