第31話 秘話! 新空港新幹線物語

「成田新幹線の着工は昭和49年1974年。しかしその前途は多難であった。なにしろ着工前の昭和47年1972年にその経路上の江戸川区の地権者や土地区画整理組合から新幹線の騒音の問題、通過するだけで駅がないこと、さらに都市計画と齟齬が起きるということで計画認可取り消しの訴訟が起こされておる。これはすぐに東京地裁に却下され、翌年に東京高裁に棄却されておるが、反対運動はほかにもいくつも起きた。当時の美濃部東京都知事も計画凍結を主張、千葉県知事も成田空港建設で強制収用の強制代執行を行使したにもかかわらず新幹線計画には賛成できないと難色を示した。もちろん空港建設反対派はもっと反対した。

 空港開港予定の昭和53年1978年には京成スカイライナー(初代)AE29号が京成の津田沼検車区宗吾支区で放火された。空港建設に反対する中核派がガソリンを撒いた上で時限式発火装置を作動させたのだった。鉄道公安官が成田ですでに警備を実施していたのだが、国営でも公営でもない私企業の当時の京成電鉄には警備の組織も手段もなかった。検車区にいたのは泊まり込みの助役数名、犯人の侵入に気づけなかった。

 そんななか、新幹線の開業はそのままどんどん遅れ、1976年に予定していた開業は無理、78年の空港開業にも間に合わなかった。

 そして新幹線計画は転変し、とうとう1983年、計画は凍結された。着工できたのは東京駅の一部、成田市の土屋地区、成田線との交差部から空港までの路盤とトンネル、成田空港駅までの8.7キロのの設備だけであった。ほかは建設用地の僅かな買収だけ。そのまま1987年、国鉄分割民営化にあたっては整備計画そのものが失効、土屋-成田空港間8.7キロは国鉄清算事業団が承継した。だがそれを当時の運輸大臣がその設備に京成線とJR線を乗り入れる上下分離方式を指示、1990年、東京側の施設は京葉線となり、1991年、JRと京成が乗り入れる。成田エクスプレス253系と京成スカイライナーAE100形が使用された。2010年、平成27年には成田スカイアクセスも開業、2代目AE形が最高速度160キロで走ることになるのは周知のとおりである」

「そうですよね。しかしすごい字数だなあ……。総裁お疲れ様」

「ちとつかれたぞ。コーラでも飲もう」

「またカフェインで悪酔いしないでくださいね」

「さふであるな」

 みんな息を吐いた。

「なかなかしんどいのう。それになかなかバトルにならぬのう」

 総裁がぼやく。

「もー。荒事期待しないでください。ヒドイっ」

「ワタクシたちはそもそも海老名警察署のバイトでMUという腰掛けて飛ぶ飛行装置を駆使した特殊防犯飛行隊もやっておるのではなかったのか。時系列もいささか混乱しておるぞ」

「著者さんに苦情言うべき案件ですよね」

「しかも我々はいま高校何年生なのだ? もう3年超えてしもうたぞよ」

「『バーズアウェイ・鉄研でいず4』だともう卒業してましたよね。私達」

「うぬぬ。著者、ケシカラン!!」

 総裁が吠える。

「まあまあ、飲み物飲んで落ち着きましょうよ」

「それに私達、卒業後でバラバラの普通の女の子になるのもつまんないと思うし」

「うむう。ラブライブではなくアイマスのように長寿シリーズにはなれぬのか」

「あとはサザエさん方式で行くしかないですよね」

「でもそうなると鉄道の実情と齟齬が起きるぞよ」

「まーまー、それは著者さんに悩んでもらいましょうよ」

「うむ、さふであるのう」

 みんなお茶を飲んだ。

「みんなでまた、鉄道模型レイアウト作って展示したり、旅行行ったりできるようになれるかなあ」

 御波が嘆息した。

「分からぬ……コロナウイルスに聞くしかないかもしれぬ」

 みんな、言葉にならなかった。

「話を再開するぞ。成田空港の門出で、国鉄は明るい未来を考えていた。日本の鉄道技術、とくに当時成功しつつあった新幹線を海外に売り込み、それによって累積赤字を解消しようと考えたのだ。そこで計画したのが、成田に日本の鉄道技術のショールームとしての鉄道博物館建設である」

「初耳ですわ!」

「うむ。ワタクシも知らなかった」

「どこまでが事実でどこからがフィクションかわかんないですよ。これじゃ読者のみなさんが誤認しますよ」

「この話はフィクションであり、実在の人物・組織とは何の関係もありません、と但書がいるのう。でもこの話のタグを見よ!」

「うっ、SFってタグがある」

「さふなり。フィクションであることは明示しておるのだ」

「ヒドイっ!」

「話をすすめるぞ。その鉄道博物館、おそらく建設予定位置は、現在の成田空港第3旅客ターミナルであると推測したのだ」

「今成田スカイアクセスが成田東武ホテルエアポートの前を地下トンネルで通過してるあたりですね」

「さふなり。そして、ここには1983年時点で、すでに何らかの地下施設が存在していた」

「えっ」

「8.7キロの区間だってことですか。トンネルだから?」

「うむ。おそらくこの幻の鉄道博物館、大宮や梅小路に現在あるもののように、営業線から館内に展示車両を引き込めるように作ってあったと思うのだ。新幹線のトンネルとともに、その引込線の分岐部、さらにその先の地下室は、すでに計画中止前に作られていたのだ」

「ま、まさか!」

「そう」

 総裁は、眼を妖しく揺らした。


「ここに、幻の機関車C63と、都市伝説に消えたお座敷電車『うのはな』が、保存されておるのだ。それも、この現在も」


「そんな!」

 みんな、ゾッとした。

 何十年も、誰にも知られずに地下で眠っている、鋼鉄の車両を想像して、その不気味さにおもわず、みんな言葉を失ったのである。


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