電撃茨城遠征編
第9話 抜錨! エビコー鉄研、北へ!
「御波ちゃんの占い、怖かったねー」
「さふであったのう」
「えー、あれ、私のせい?」
「御波くんはいささか占いを自重されたいのだ」
「えー、総裁のどこ押せば自重って言えるんですか」
「うぬ? ワタクシはそうであったのか?」
「もー。めちゃめちゃだようー」
「でも、死神のカードは悪いだけでもないですよ。新たな始まりでもあるわけですから」
「とはいえ、そのかわり何かを失ってしまうということでもあろう」
「まあ……そうですけど」
御波はまた口を尖らせる。
「うむ、とはいえワタクシの灰色の頭脳には、何かぼんやりと浮かんでおるものがある。舘先生のおうちでのことと、その親友であったギースルさんの話を組み合わせることで、なにか一筋のストーリーがありそうな気がしてきた」
「やっぱり蒸気機関車C63の秘密ですか」
「かといってツバメくんをその件を探らせる密偵として働かせるのも気が引ける」
「そうですよ、ヒドイっ。それにギースルさんも過去の話するの、あんまり楽しそうじゃないし。それより今のテツな話のほうが好きみたいで」
「無理は禁物であるぞよ。せっかくの縁がだめになっては元も子もなかろう」
「デスヨネー」
「とはいえ、ツバメくんの恋の展開は今後どうなるのだ?」
「実は……今度、ギースルさんの茨城のアトリエに行こうかと思ってて」
「ええっ」
「絵の修業の近道だと思って。アトリエ見学」
「うぬ、芸事というものにおいて、近道は禁忌ではあるのだが」
「でもギースルさんの技術を少しでも受け継ぎたいんです!」
「ツバメちゃん、今アニメスタジオの背景美術のバイトもしてるもんね」
「さふであるのう」
「そこで技術の習得に貪欲なのはステキですわ。わたくしも見習いたいものですわ」
詩音が微笑む。
「うむ、その観点もありなのだ」
「でも一人でJKが中年男性の家に行くなんて危ないよー」
「それもまた然りであるのう」
「でも、行かないのはもっといやよね」
「そうです。ヒドイっ」
「ひどくないよー」
すると、総裁がすっくと立ち上がった。
「うむ、それなら、我ら全員で帯同するのはどうであろうか!」
「えっ」
「ギースルさんのアトリエを我らみんなで訪問するのである! 新春茨城遠征なのだ! まさに
「まぁた総裁『艦これ』とかいろいろ混ぜちゃって。混ぜるな危険ですよ」
「でも真面目な話、ツバメさんの目的を果たすにはそれが一番現実的な方法のように思われますわ」
「そうだよー」
「じゃ、みんなで遠征したい、んだけど……私達の軍資金問題って解決したの?」
「うむ。我らは問題ないのだが、取材をする我らの著者が貧乏であるのが由々しきネックであった」
「著者さん、あいかわらずお人好してタダ働きばかりさせられてたもんね」
「しかし! 昨年! 著者は6人の候補のうち2名しか採用されないという厳しい選抜をクリアして夜勤バイトを始めたのである! そのバイト代がついに入り始めた!」
「すごーい!」
「そのバイト代で、今度声優さんにお願いして我ら鉄研でいず!のボイスドラマを作ろうとまでしておるのだ!」
「もー、そんなメタな記述しちゃって。読者さんたちすっかり目を白黒させてますよ」
「うわっ、ほんとだ!」
「でも、解決してよかったのですわ」
「ゆえ! 茨城遠征、発動である! 僚艦諸君は直ちに出港用意をされたい!」
そしてみんなは、再び海老名駅に集合し、茨城へ旅立つのである。
「御波ちゃん、またここでタロットで占ってるの?」
「怖いけど、これも練習してモノにしないと」
御波がまたカードをぴっと引く。
「今度のカードは」
「またなんか怖そうなカードだなあ。やだなあ」
「『THE DEVIL』って書いてある」
「『悪魔』の正位置ね。意味するのは裏切り、堕落、拘束、嫉妬、憤怒、破滅」
「ひいいい、またそんなヒドイカードを!」
「でも、気を引き締めて、注意すればいいのよ。そのための占いなんだから」
「さふであるな。遠征の道中、警戒を厳となして望むのだ」
「えー!」
華子が言う。
「いやなのか?」
総裁が聞く。
「いーよー」
ズルっとみんなコケるのであった。
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