激闘自粛戦記編

第27話 渦中! 自粛オンライン

 2019年11月に中国武漢市で発生が確認された新型コロナウイルス、COVID19は、またたく間に世界的な蔓延、パンデミックを引き起こした。2019年1月には華南海鮮卸売市場閉鎖とともに最初の死者、13日にはタイでも感染者確認、16日には日本でも感染者、19日には韓国、21日には台湾・アメリカ、22日にはマカオ、23日に香港・シンガポール・ベトナム、24日にはネパール、25日にマレーシア・フランス・オーストラリア、27日にはカンボジア・スリランカ・ドイツ・カナダ、29日にアラブ首長国連邦・フィンランド、30日にフィリピン・インド・イタリア、31日にはロシア・スウェーデン・イギリス・スペインで感染者確認。そこでWHOがようやく『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)』を宣言した。

 武漢市では特に感染状況が悪く、各国は自国民を武漢から帰還させようとチャーター便を贈った。だが貧しい国ではチャーター便を仕立てられずに自国民を泣く泣く見捨てるしかなかった。そして中国経由のクルーズ客船でも感染者が次々と出て、下船どころか寄港すら拒否されることもあり、豪華を誇ったクルーズ客船は集団感染の場となり、漂流するがごとく寄港できる港を探すこととなった。日本ではクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』も大黒ふ頭沖で隔離措置となった。

 2月、新型肺炎について最初に報告した中国人医師が死亡した。彼は事実を報告したのにデマを流したとされ処分をうけた。その後彼は診察にもどったが彼も感染、死亡してしまった。当時中国当局の対応は混乱していた。この感染事態そのものを当初もみ消そうとした痕跡はまだ残っているし、中国の息のかかっているWHOの事務局長がその感染源の中国に忖度するようにPHEIC宣言を遅らせたのではないかという見方は多かった。

 混乱は経済にも及び始めた。マスクなど生活必需品の高額転売と品薄が多発しはじめた。またマスコミとネットはこのウイルスの話題で席巻されてしまい、その上で不正確な情報、さらには悪意で捏造された情報が飛び交う「インフォデミック」も発生した。

 中国では強権が発動され武漢市では対策のために病院が新たに建設された。建設決定から10日で完成した2つの臨時病院とともに、ネットを使った遠隔医療も進んだ。1月20日に中国李克強総理が対応強化を指示する。そこでようやく武漢以外での感染も開示されるようになった。中国地方政府が感染情報を上げることで中央から処分を受けるのを恐れたためだと言われている、

 1月23日に武漢市は封鎖となり、交通機関は全面停止、自家用車の外出も禁止されていた。封鎖の検問には警察だけでなく軍も出動した。その措置はまたたく間に中国の他の都市でも行われた。そして中国の春節連休は事実上無くなった。『微博』『微信』といったSNSでの検閲も強化された。習近平総書記はこの感染を建国以来の最重大衛生事件とし、本を緊急出版してウイルス対策をアピールした。だがさすがにこれは国民の反発をうけ3月に購入できなくなったが、中国国営メディアによるプロパガンダはほかにいくつもおこなわれた。そして感染拡大は中国でおきたが、発生は中国ではない、という言説が行われた。

 感染の拡大とともに、感染が確認された国での死者の発生も続いた。2月13日、日本でも死者が確認された。2月21日、日本での感染者が100人を超えた。

 感染拡大を防ぐため、イベントの中止も相次いだ。日本では東京マラソン、天皇誕生日の一般参賀が中止、サンリオピューロランドも休館、東京ディスニーランドも次々と続いて休館。サッカーJリーグの試合延期となった。またクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』では横浜港で感染対策が実施されたが、その乗客への差し入れのシウマイ弁当が届かないなんてことも起きた。

 そして3月、2日から全国の小中高校の臨時休校が始まった。12日にWHOのパンデミック宣言がようやくなされた。13日に2020年東京オリンピックのギリシャ国内での聖火リレーも中止。それでもオリンピックは予定通り開催と日本の総理は会見で発表していたが24日、その延期が決定された。アメリカでは国家非常事態宣言、25日には東京で終末の外出自粛要請が発表。

 有名人の感染も続いた。25日には英チャールズ皇太子が感染、27日には英ジョンソン首相も感染。29日には志村けんさんが感染で死去した。


 そして、エビコー鉄研のみんなも、その未曾有のコロナ禍に巻き込まれていた。



 そう御波はここまでまとめて、ため息を付いた。

 彼女は自分の部屋で、この事態をPCで文書にしていたのだった。

 飾られたフォトフレームには、茨城遠征のときに先生の撮ってくれた、特急『ひたち』で帰る鉄研みんなの写真。

 学校の休校は3月から始まり、はじめは春休みに入るまでとされていたのだが、この5月まで続いている。そして、ゴールデンウィークも潰れることになった。

 オリンピックでなくなった今年2020年のビックサイトでの鉄道模型展示イベントは2021年に開催されるはずで、鉄研のみんなはその2021年にむけて模型作りに励んでいたのだがそのオリンピックが1年延期、21年の模型展示はほぼなくなって、みんな目標を見失ってしまった。2年かけてがんばるはずが、それどころか学校もなくなり、さらに電車に乗っての外出も自粛せざるを得ない状況に、みんなは窒息しそうな日々を続けていた。

 もちろん、鉄研の2020年ゴールデンウイーク茨城遠征も消し飛んだのだった。

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