シンデレラ・エクスプレス 幻の蒸気機関車と秘密結社(鉄研でいず!5)
米田淳一
閃光舘先生追及編
第1話 新春! 鉄研活動会議
エビコー、海老名高校の鉄研部室。
「あれ、顧問を交えての活動会議になんで顧問の
「抜けられない用事があるって言ってたわ」
小野川先生がそう言う。
「ナンダソレは」
総裁がちょっと不機嫌な声になる。
「なにかしらね。昔なじみの友人との用事だって言ってたわ」
「昔なじみ?」
「なんでしょうね。私も舘先生にそこらへんのことは聞かせてもらえてないのよ」
小野川先生は困っている。
「うむ、これは……おそらく舘先生が北関東の有名大物テツであったころの話であろうの」
「総裁なんでそんなことわかるんですか。ヒドイっ」
部員のツバメがつっこむ。
「日本推理作家協会式推理術4級」
ドヤ顔の総裁である。
「なんですかその英検4級みたいな嗜み程度の推理術って」
「イミワカンナイ!」
部員のみんなもさらにツッコむ。
「これでもワタクシ、我が著者よりも推理はできるのだぞ」
「そもそも著者さんが推理苦手すぎるんですよ。推理作家協会所属なのに。情けないなー」
「はいそこすぐメタネタに走らないー」
いつものようにきゃいきゃいと鉄研みんなで話し興じているのだが、しかし総裁だけ、思案の顔で首を傾げている。
「何であろうか……」
総裁は考え込む。
「なんでしょうね」
鉄研副総裁の
「わからぬ。そもそも舘先生は北関東時代のことはあまり語ってくれぬ。ワタクシもテツ活動でいろいろ昔の噂に接するのだが、舘先生がやってきたこと、いまいち話として聞こえて来ぬ」
「でも舘先生、大物だったって」
「どうにも腑に落ちぬ……」
総裁はまだ考えている。
「舘先生、本当に大物テツだったのかなあ」
「わからぬ。聞いてみようと思うこともあるのだが、年上の方が自ら語らぬ過去をほじくり返すのは気の乗らぬことなり。何か話せぬ理由があるのではないかと思うぞ」
「そうだったら聞いちゃダメですよね」
「かといって秘密を抱えたままでは人間は辛い。舘先生、語らないのはなにかの秘密があるからではないのか。としたら、秘密を抱えたままではその重荷に耐えきれなくなるのも人間なり」
御波も考えている。
「そうですよね……どういう秘密かわかんないけど、その重荷を軽くしてあげたいなあ。だって舘先生だってもっと楽しく生きて良いはず」
「舘先生、そんなに楽しく見えないのか」
「時々そんなことフッと思うんです。舘先生、この学校の物理の先生させとくにはもったいないな-、って。もっと活躍できそうな人だもん」
「同意なり。舘先生、どうも『あぶデカ』のマネをしたりするほかは昼行灯しすぎであるのだ」
たしかに舘先生は穏やかな男性教師であるのだが、どこか物足りなさを総裁は感じていたようだ。
「そうですよね」
「ふむり」
総裁は考え込んだ。
「やはり舘先生の事、少々調べたほうが良いのかもしれぬ」
御波は少し考えた。
「そうだ! 舘先生のおうち、みんなで訪問するってどうでしょう?」
御波が思いついたらしい。
「う、それは! 独身男の住まいなど、訪問してもろくなことはなさそうだが」
「なんで?」
御波は目をキラキラさせながら言う。髪飾りがそれに従って可憐に揺れる。
「だいいち、多分散らかっておるぞよ」
「だったら、私達でお片付け手伝ってあげましょうよ!」
御波が屈託なげにそう言う。
「うっ、御波くん、キミはナチュラルにヒドイこと考えてないか……それは体良く先生の家をそのついでに洗いざらい『家宅捜索』してしまおうという魂胆では……」
「先生きっと一人暮らしで片付けまで手が回んないんですよ!」
「さらりと恐ろしいことを……さすが密かにドSの御波くん……」
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