第10話 傾奇者
甲賀。『こうか』とも『こうが』とも言う。
近江国は現在の滋賀県。甲賀は滋賀県南端にある。
甲賀忍軍とされる集団には、甲賀五十三家がある。
琵琶湖を囲む近江国にあり、鈴鹿山麓西端に存在する甲賀。
室町幕府15代将軍足利義昭を追放し、事実上室町幕府を瓦解させたのは、天正1年(1573年)だった。
北朝系天皇を奉戴する足利幕府。室町時代、京都の吉田神社の神官吉田兼倶が起こした吉田神道は、偽天皇家ともされた北朝系天皇への神道であって、信長が正統とした南朝系天皇家とすれば、北朝系神道である卜部神道(吉田神道)は敵対すべき相手だった。
神武天皇東征に武勲があった賀茂家遠祖の賀茂神道からすれば、卜部神道を骨格とする吉田神道の教義は受け入れないものであった。
高賀茂家であった役小角。
京都の賀茂(鴨)神社には上賀茂、下賀茂とあり、52代嵯峨天皇が賀茂神社に、賀茂斎院と言う、皇族の未婚の処女を斎宮として置いた事から、賀茂神社の巫女のトップとして、50代桓武天皇の第二皇子であった嵯峨天皇以来、皇族と負かい繋がりのある賀茂神社と賀茂の神道と、吉田神社が卜部神道を骨格とする神道であっても、卜占として亀の甲羅を占いの根拠とする神道と比べると、賀茂斎院が置かれる賀茂神社の方が、天皇家と深い繋がりがある神社と言える。
高賀茂一族の
白い鳩を夜に放し、黒い烏を昼間に放つ。
太陽の象徴たる漆黒の濡れ羽を持つ八咫烏の三本足は、昼間に黒い烏を放つ事を意味し、白い鳩を放したノアが、最初に放った黒い烏が帰ってこなかった事と、白い鳩を夜に放ち、鳩が迷わずノアの元へ戻ってくる事が出来たのも、鳩の赤い目とノアの赤い目が象徴する赤外線感知のインフラビジョンの能力を赤目が持っていた事に由来するだろう。
赤外線で温度感知出来るが、インフラビジョンは相手の体形が判別出来る。
服の上から相手の体形が判別出来るその能力。
一番体で温度が高い場所……。
征夷大将軍は源氏の氏長者で、淳和・奨学院別当でもある。
源氏の三兄弟は八幡太郎義家、賀茂次郎義綱、新羅三郎義光。
八幡太郎の八幡神は、九州豊前宇佐八幡社に祀られている。
西へ飛ぶ白い鳩と。
東へ飛ぶ黒い烏。
吉田神社は東を向くが、鎌倉幕府を呪詛した後醍醐天皇からすれば、東へ敵対する時の神道であって、京の東の鴨川、賀茂の川向こうへ枕を向ける事で、その頭上の回線を川で切る時の流し雛の神事こそ、自分の罪の身代わりを雛として流す事だった。
吉田神道を抑える事が出来る鴨川であり、賀茂の神道だったのだ。
東へ正対する神道の片翼だけでは日本の臍を支配出来ない。
天使の羽は両翼であって、片翼は堕天使なのだ。
日本の臍である信濃と美濃。
関ケ原は美濃国にある。
信長が天下布武を唱えた岐阜城を望む場所に関ケ原はある。
東西のフォッサマグナが鬩ぎ合う諏訪湖。
守矢の神は諏訪大社にあり、諏訪には愛する女性が山の中に連れ去られ、諏訪の地下から愛する女性を探し出す甲賀三郎の伝承がある。
武田信玄に仕えた望月千代女が全国から『ててなし子』の中から美少女を選び、くノ一として育てていた所だった……。
信濃国一之宮の諏訪大社。
諏訪大社の末社、飯沼諏訪神社の桜を見ながら、サスケと蛍、英瑠とウドの4人は、甲賀忍軍の
信長が畿内平定の為に派兵する前に、戦国蹴球の懸場へ斥候として遣わされる忍びを選ぶ為、信長庇護下にあった近江国甲賀へ、甲賀五十三家が全国から集まってきていたのだ。
「
前田慶次郎利益は、滝川一益の従兄弟、益氏の次男だったが、尾張海東郡荒子城主前田利久の養子となっていた。
出生年は1533年、1555年ともされるが定かではなく、天文11年(1542年)と言う説が最もらしい。
前田慶次が滝川一益の息子、弟説もあり、此処では慶次が便宜上一益を「親父《おやじ」」と呼ぶことで統一する。
甲賀忍軍の長ともされる滝川一益。
滝川一益は慶次に向かって首を振る。
「頼んでも駄目か。親父?」
「無理だ」
慶次は下を向く。
「差助を俺にくれ」
「駄目だ」
一益は首を振る。
「お前は差助から何を引く?」
一益の口が開く。
「差助を苦しめる頭上の鬼の正体」
一益の指が
「差助からその鬼を引かなければ、お前が死ぬる……」
「ほうか」
「何だと?」
「ほうかと言った」
「差助の頭上の鬼。おのれならどうする」
「俺なら酒を飲ませて寝させる」
「酒呑童子だとぬかすか!」
「伊吹山の伊吹童子かもしれん。安倍晴明の隠し子とされる茨木童子かもしれん」
「山の鬼か、河原の河童か?」
「鴨川で川遊びでもするか!」
慶次の顔が一益から離れる。
鴨川の川上から流れる死体……。
慶次の髷が向く方向は東。
顔が北を向く。
刀の切っ先が社を向く。
賀茂神道と吉田神道の闘争は、京の霊的覇権を掛けての戦いだった。
南朝と北朝。
賀茂家遠祖は紀州和歌山で神武天皇を助けた存在だ。
南朝と北朝を繋げる三本道。
上道、中道、下道を作った吉備真備。
南と北を繋げる三本道によって京都の平安があったなら……。
蹴鞠御三家で尻尾となるべく存在……。
難波家。
飛鳥井。
賀茂家。
三つが二つへ。
二つが一つへ。
一体となる前の三位にとって、三本足が逆さなのか、下を向くのか。
三位は一体であって、一体ではないのだから。
白い鳩が俯瞰する。
上空から彼女を確認する。
「差助! だらしないよ!」
英瑠がサスケの頭を小突く。
総髪にしている蛍の後ろ髪が揺れる。
両手をダランと下げ、サスケがのそりのそりと、森の民の意味を持つオラウータンのように、街道を甲賀に向けて歩いてゆく。
畿内平定を狙う
「ウド! あげたお結び返せ!」
10ステージ タイムアップ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます