第25話 井戸の中の狐
織田信長公とキリシタン。
修道僧の事をイルマンと言うが。
安土城下で一番嫌われていた童子。
自分の虎として、キリシタンのイルマンの後ろで虎の威を借る狐となっていたのだが。
彼の一族は安土・桃山時代の画家であり、江戸時代には前田藩があった能登の長谷川等伯から始まる長谷川派に属する一族だったが。
その童子は、童子ではないのにお河童頭で、同じ背丈の
写生と射精。
長谷川派に属するその童子は、キリシタンのイルマンの下で洋画を学んだ油絵で、その油絵を童子の背中に描く技法で、タトゥ、彫リモン=モンモンを童の肉体に刻むのではなく、油絵として童子を任侠の子のようにし、その童を引き連れ、安土城下で虚勢を張っていたのだ。
元はただのお河童……。
そのお河童は、カノンという名前をイルマンに付けられているが、その氏素性は知れない。
彼は安土城下で観目麗しい童子を見つけると、写生をすると称して、河原で「しゃせい」していた。
彼が見つけた美男子。
安土城下で知らない町人がいない森三兄弟、蘭丸、力丸、坊丸。
カノンというそのお河童頭が森坊丸の観目麗しい姿を見つけ、彼に近寄ろうとしたが、彼の肩が町人の腹に触れた。
カノンの持つ毬が転がってしまう。
無言のカノンという存在は、カノンの後ろで背後霊のようになっていた武士に刀を抜かせ、その帯刀で町人を無礼討ちにさせた。
その
自分より容姿が整っていたその町人を妬んで元からその町人を
カノンがその町人の裸体を描きたいと申し出た時、それを固辞した町人。
触れてもないのに、身体を触れられたと、その冤罪で無礼討ちにせんが為の奸計。
「汚らわしいモノが、我に触れるな」
カノンという存在は、衆道=同性愛の輩だった。
森坊丸を知らないカノンという存在が、坊丸に声を掛け、坊丸の裸体を描きたいと申し出た時。
坊丸は無言で団子を食べ、彼の双眸で一瞥くれた後で無言で立ち上がる。
坊丸の後ろ姿を執拗に追い駆けるカノンに、今度は町人の童がぶつかり、カノンが持つ
坊丸が振り返る。
坊丸の足元に転がった毬。
坊丸はその毬を蹴り上げる。
その毬を森坊丸配下の武士が蹴り上げ、それを安土城の堀の水の中へ。
ポッチャ
あまり観目麗しいとは言えないカノン。
井の中の蛙か?
堀の中へ彫を身体に彫る前の油絵を描いた毬。
坊丸を凝視するカノンの
「汚らわしいモノに触れたくないのでな」
坊丸はカノンを見つめようともせず。
坊丸の背にカノンというお河童頭の憎しみの目が。
第25話 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます