第17話 オラショ
南近江の領主、六角
甲賀者が得意としたのは鉄砲術だが、元々火術に長けていた甲賀者―。
「親父殿―」
前田慶次郎利益の手で回転する手毬―。
「―」
滝川一益は
電撃速攻、
前田慶次郎利益の側に仕える四人の
甲賀の里を見下ろす小山の山頂で、
雑賀衆とは、浄土真宗の石山本願寺の一向宗と結び、信長の敵となった紀州の土豪。
浄土宗、浄土真宗は一向宗、念仏宗とも言われるが、念仏禁止にしたのが日蓮宗だ。
信長は天台宗総本山比叡山を焼き討ちにしたが、天台宗と日蓮宗の根本経典が法華経だ。
信長は法華宗と一向宗を敵に回した訳だ。
西方浄土の教主が阿弥陀如来。東方浄瑠璃世界の教主が薬師如来だが、京都の吉田神社は京の東に存在し、関東への抑えとして神社だから、東へ
浄土宗、浄土真宗は西方浄土信仰であり、西に枕を向ける。西に足を向けない一向宗。
関東へ出兵する時、武士の中に一向宗徒がいた場合、馬に乗る時、東へ背中、西向きに馬に乗る事になるのだが、信長が一向宗を問題視したのにも訳があったのだ。
信長は南朝系天皇家を支持していた。北朝天皇家との神道だった吉田神道は、信長にとって敵でしかなかった。
明治維新後、天皇家の神道は伯家神道へ変わり、吉田神道ではなくなった。
伯家神道は、神祇伯白川家の神道であり、明治維新後、明治天皇陛下は京都の船岡山に信長への謝辞を示すようにその平和記念碑を建てた。
既に現在でも天皇家の神道は、北朝天皇家とつるんだ吉田神道ではなく、神祇伯白川家の伯家神道へ変わっているのだ。
山道を飛ぶように駆け巡る―。
高久が走る山道を一本下へ―。
並走する影へ視線を落とす高久。
視線で会話をする二人の主従関係。
高久の影は根来衆徒であった―。
高久は
「!」
高久はすぐに起きない。自分の行動が相手に察知された時が最後だからだ。
高久が背中で見るその存在は、
褐色の肌。白い肌ではない。
高久がゆっくりとその体躯を起こし、その美女に正対するが、その裸にも動ぜず、
美女の裸を前にしても、その目線をしっかとその美女の眼に据えていた。
「襲わぬのか?」
一糸纏わぬその裸体を晒した女が、高久に
「九鬼の女か?」
女はコクリと頷く。
九鬼水軍。伊州、紀州を拠点にする水軍だが、九鬼神道としても知られる。
「私を前に抱かない男はいない―」
高久は頷かなかった。
「私が以前、
「親は子と通ずるぞ」
「親と子でもない二人を無理やりに繋げる神道でさえある世の中。壁に耳あり、障子に目あり。親が呟く言葉を盗み聞き、別の場所で感通したと、親子の通じ合いを詐称する術も忍びにはある―」
「わたしは自分が生んだ一人子を探している―」
九鬼の女は言った。
「水浴びせし時、わらわを浚った男が生ませし子供―」
賀茂別雷神は、水浴びしていた女が丹塗り矢で受胎し、生まれた神だ。
迦毛大神は、大国主命の息子。
在来神であった賀茂の高祖神。
「本当の親子の絆をかき乱す、偽の神道が憎い―」
「浚った男ではなくか―」
「私を女にしたのは、
私の兄者だ―」
九鬼の女は、薄絹を纏った。
高久は、偽りで神道を結ばせる存在を探す役割を持っていた。
高貴な家柄に送り込まれた、血族ではない子供を探し、その子供をそこから消さねばならぬ宿命を持った男―。
偽りの神道を見破らねば、血筋は絶える―。
名前を偽り、神社の御宮参りで生誕日を逆算し、十月十日を逆算する。
昔、
「お前の息子を知っている―」
第17話 了
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