第45話 鹿の首


 浅井長政公とその父親は、信長の小谷攻めで落命したとされている。


 小谷攻めで、お市の方と三姉妹は木下藤吉郎秀吉に助けられたが。


 浅井長政が、妻のお市の方と三姉妹を道連れにしてもおかしくは無い。


 信長の密命。


 小谷攻めに参加せず、安土城下で密命ご下るのを待つ別働隊。


 仮眠を取る差助の側に近寄る少女の口は開かない。


 黙っている相手とコミュニケーションを取るにはこちらから話し掛けねバならない。


『何ようだい?!』


 急に走り出す相手に対応する為には追いかけねばならない。


 差助の枕元にあった鞠。


 三姉妹と小豆の残り香が移った鞠。


 少女を追い掛ける差助が離れた隙に。


 鞠を入れ替えた存在は、


 少女の兄の渡し守だった。


 山犬の、人間の数千倍の嗅覚。


 山犬を゙大麻で手懐けたイルマン、妖怪のカノンと言う河童。


 山犬遣いがいなくなった時、山犬を゙操る為に必要な匂い。


 鹿の生首。


 鹿の生き血が染み込んだ布で作った鞠にすり替えた理由は、まさにそれだったのだ。


第45話 了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る