第30話 蚊帳と鰹節 


 北近江攻め。

 織田上総介信長は義弟の浅井長政の北近江を攻める準備をしていた天正1年(1573)。

 

「虫除けの蚊帳かやはいらんかい?」


 信長の安土城下で虫除けの蚊帳を売る一人の男。 


檜葉ヒバの木から作った虫除けの蚊帳だ!」


 両の腕は丸太ん棒のように太く、体躯たいくは鋼のように鍛えられているようだ。


 蚊帳は普通は麻、大麻等から作られる。

 タイマの花房や葉からはマリファナが作られるが、麻薬は現代では通常違法薬物として禁じれている。

 ロープや蚊帳、漁網の原料になる事で大麻栽培の資格を持つ農家は合法的に栽培している。

 大麻。


 神宮大麻。


 伊勢神宮が歳末ごとに信徒の家庭に配る神符。


 檜葉はアスナロとも言う。

 土木用材、橋梁材きょうりょうざい、建築材等に使用され、材に含有されるアスナロンには殺菌作用があり、ポマードや歯磨きに混ぜて使われる。

 日本の不良やヤンキーや、アメリカの60年代の若者の頭髪の整髪料だったポマード。

 着火すると燃えてしまう。

 セラフィムとは熾天使してんしは燃えるような頭をしていると表現されるが。


 ポマードに煙草は厳禁。


 烟草ではなくマリファナという麻薬、煙を吸うようになったのは皮肉なものだ。


 蚊帳を売る剛強な男は朝鮮半島出身である事が分からぬように訛り混じりの日本語で商談をしている。


「鰹節はいらんかえ?」


 色気だつような匂いを漂わせる若い女は巫女みこだと言う事を見抜かれない位に町娘の振りをしていた。


「いらんかえ?!」


 町娘の声の後。


 町娘の子分のように見える訳でもないデカい体躯の男。



「鰹節はいらんかい?! 干飯ほしいに掛けてお湯掛けて!」


「干飯に掛けて! お湯掛けて!」


「軍功挙げれば城持ちだよ!」


 北近江攻めの準備の安土城下。


 蚊帳を売る漁師上がりの男に。


 鰹節を売る2人の男と女。


 色香に惹かれたか? 一人の男が鰹節を買って行く。


 巫女が鰹節を女陰に出し入れし自分の自慰行為を信者に見せる神事がある。


「売れた! 最後の一本売れた!」


「30本売れた!」


 町娘の声。


「仕入れたのは29本だぞ?」


「堅い事言うんじゃないよ」


「鰹節は堅い」


「安くて堅くて美味いよ! この鰹節は!」


 町娘は、


「うちの亭主のモノと違ってね?!」




 北近江の小谷城。

 浅井長政の子供達が長政と於市の方の前で蹴鞠に興じていた。

 長政には男子の子供が4人は居たと言う。

 茶々を長女とする三姉妹。


於江おごう」 


 三女の於江与は2代将軍徳川秀忠の御台所みだいどころとなる女性だが。


「於江の絹の着物で作ったこの鞠」


 子供4人が空中に蹴り上げている鞠は於江の着物で作られたのか?


 着物に移った於江の身体の香り。


 静電気を発するシルク。

 絹は帯電性を持つ。


 警察犬は犯人の匂いをトレーサーとして追跡する。


 男子4人の匂いも鞠に移るのか?


 蹴鞠と手毬。


 着物姿の霊体。


 手毬で地縛霊を解放するとでも言うのか?


 霊体を除霊する方法。


 中臣鎌足と蹴鞠。


 天智天皇が中大兄皇子と呼ばれていた時、蹴鞠で脱げた靴を拾った事で知己となったと言う逸話。


 中臣鎌足ば百済の亡命皇子、豊璋王ほうしょうおうとされる説がある。


 鬼道とは朝鮮半島の呪術。


 百済と新羅の戦いは日本で焼き直され続けるのだろうか?



第30話 了




 




 


 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る